• 2024年7月30日

肥満症の食事療法と運動療法について専門家が分かりやすく解説

東京都中野区のJR中野駅からすぐのところにある中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長、大庭健史です。

 

当クリニックでは、生活習慣病を専門としているため、肥満および肥満症の方が多く来院されます。

 

肥満および肥満症の方は、スティグマ(烙印)と呼ばれる偏見や差別により、「太っているのは自己管理の問題であり、医療の対象ではない」という誤解を受け、適切な治療を受けられないことが少なくありません。

 

当クリニックでは、まずそのような方々に肥満の原因となる病気(甲状腺機能低下症やクッシング症候群など)がないかを調べます。

その結果、特定の病気がない方には「原発性肥満」もしくは「原発性肥満症」と診断します。

 

そして、このような方々は、生活習慣病(2型糖尿病、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症など)、 動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)、睡眠時無呼吸症候群、肥満関連腎症、一部のがん(大腸がんや胆道がんなど)のリスクが高まります。

 

そのため、当クリニックでは肥満症の治療にも力を入れています。肥満症の治療はGLP-1製剤などの薬物治療も重要ですが、まずは食事療法と運動療法が治療の基本です。今回はこのテーマについてお話しさせていただきます。

 

 

肥満症の食事療法について

日本で行われた臨床研究によると、6か月間の生活習慣改善プログラムに参加し、体重が3~5%減少した肥満症の方は、耐糖能(空腹時血糖値とHbA1c)、血圧(収縮期血圧と拡張期血圧)、脂質(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)、肝機能(AST、ALT、γ-GT)、尿酸が有意に改善したと報告されています。(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1871403X13001981?via%3Dihub)

 

この結果を受け、肥満症ガイドライン2022には「減量の目標としては肥満症では3~6か月で現体重の3%以上が臨床上意義ある減量と考える。」と記載されています。

 

これを達成するために、肥満症ガイドライン2022では、BMI 35未満の肥満症では1日の摂取エネルギー量を目標体重([身長m]×[身長m]×22)×25 kcal以下、BMI 35以上の高度肥満症では目標体重×20~25 kcal以下と推奨しています。

 

ただし当クリニックでは、1日の摂取エネルギー量を目標体重×27.5 kcal以下とし、肥満症ガイドライン2022よりも緩やかな目標を設定しています。

 

この理由は、この目標値でも十分な体重減少効果が得られ、また比較的達成しやすい目標であるためです。

 

それでも十分な体重減少が得られない場合には、1日の摂取エネルギー量を目標体重×25 kcal以下に設定し治療を行っています。

 

各栄養素のバランスについて、肥満症ガイドライン2022では炭水化物50~65%、蛋白質13~20%、脂質20~30%が一般的と記載しています。

 

当クリニックでは、長期的な安全性が立証されていない糖質制限は勧めず、肥満症ガイドライン2022より炭水化物を少し控えめにした炭水化物50~55%、蛋白質15~20%、脂質25~30%を推奨しています。

 

肥満症の運動療法について

運動療法は減量にはあまり効果的ではありませんが、肥満予防や食事療法で減量した体重を維持することには有効です。また、運動療法は血糖値・血圧・脂質の改善にも有効です。

 

おすすめの運動は、有酸素運動を中心にレジスタンス運動を組み合わせることです。

有酸素運動とは、運動負荷がそれほど高くなく、息が切れない程度の運動を指します。ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどが該当し、これを週3回以上行うのが良いとされています。

 

一方、レジスタンス運動とは、いわゆる筋力トレーニングのことで、腹筋運動やスクワットなどが該当します。この運動は、筋肉が運動による疲労から回復するのにある程度時間を要するため、週2~3回程度にとどめるのが良いとされています。

 

しかし、仕事で忙しい方や高齢の方などは、これらの運動を継続することが難しい場合もあります。そのような方には、歩く距離を少し延ばす、室内で比較的軽いダンベルを使ったトレーニングなど、より負担の少ない運動を継続することをお勧めします。

 

 

食事療法と運動療法で十分な減量が得られない場合について

一部の肥満症の方では、残念ながら食事療法と運動療法だけでは十分な減量ができないことがあります。このような方には、薬物治療や減量手術をお勧めしています。

 

薬物療法については、当クリニックのホームページ「生活習慣病」でも説明していますが、防風通聖散は効果が乏しく、サノレックスは依存性があり長期間使用できないという問題があります。

 

そのため、当クリニックでは糖尿病ではない肥満症の方にはウゴービによる治療をお勧めしています。ただし、ウゴービの処方は教育研修施設である大規模な医療機関(大学病院など)に限られます。

 

当クリニックに通院されている方でウゴービによる治療が最善と判断された場合には、そのような医療機関に紹介して治療を受けていただきます。

 

また、薬物治療を行っても十分な減量ができない場合や、薬物治療だけでは十分な効果が見込めないと判断される場合には、減量手術をお勧めすることもあります。

 

最後に

肥満症は様々な病気のリスクを高めるため、そのまま放置せず、専門の医療機関に通院して治療することが大切です。

 

また、一旦減量に成功して健康障害が改善しても、肥満症の方はリバウンドしやすく、健康障害が再度悪化しやすいため、定期的に通院する必要があります。

 

当クリニックには、肥満症の治療を専門とする医師や管理栄養士がいます。肥満症でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

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