• 2023年10月28日

昆布はたくさん食べると甲状腺に悪影響というのは本当?

当クリニックのブログをご覧いただいている方々の中には、海藻類について「たくさん食べるのは体に良い」と聞いたこともあれば、逆に「たくさん食べると甲状腺機能低下症になる可能性がある」と聞いたこともあるかもしれません。

 

 

大学病院や市中病院などで甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病など)を数多く診察してきた当クリニック院長が、このテーマについて分かりやすく説明させていただきます。

 

海藻類は低カロリーであり、また噛み応えのあるものが多いことから満腹感を得られやすく、ダイエットに適した食材です。日本を中心に東アジアでは海藻類が昔から食べられてきましたが、近年では健康やダイエットへの意識の高まりや日本食ブームも相まって、アメリカやヨーロッパからの注目度も高まっている食材です。 

 

海藻類に豊富に含まれる水溶性食物繊維(アルギン酸やフコイダンなど)は、ヒトの体内で消化されない栄養素で、糖質や脂質を吸着して便として排出させてくれます。実際、お米にわかめを混ぜることで、単独でお米を摂取した場合よりも、食後の高血糖と過剰なインスリン分泌を抑制するという報告があります。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31418121)

 

(引用:Plant Foods Hum Nutr 2019; 74: 461-467)

 

また海藻には、カリウムやカルシウム、鉄などのミネラルが豊富に含まれており、貧血や骨粗鬆症などの疾患の予防と改善にも効果があるとされています。

 

さらに、海藻類の摂取頻度が高いと、死亡リスクの低下や女性の脳血管疾患による死亡リスクの低下といった報告もあります。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18260705)

 

そのため、海藻類はダイエットだけでなく、生活習慣病などの予防や改善にも効果があると考えられています。

 

一方で、海藻類について「摂りすぎない方が良い」という話を聞いたことがあるかもしれません。多くの海藻類は問題ありませんが、一部の海藻類、具体的にはヨード(ヨウ素)を豊富に含む昆布がこれに該当します。

 

 

ヨード(ヨウ素)は昆布やひじきなどの海藻類に多く含まれている成分です。世界では、約20%以上の人々がヨード(ヨウ素)不足とされています。このヨード(ヨウ素)が不足すると、これを原材料とする甲状腺ホルモンが十分作れず、甲状腺機能低下症のリスクが高まります。そのため海外では、食塩などにヨード(ヨウ素)を加えるなどしてその摂取量を増やそうとする取り組みもされています。

 

しかしながら、日本人は海藻類や海洋魚を豊富に摂取することから、ヨード不足に陥ることはほとんどありません。むしろ、日本人の中にはヨードを過剰に摂取する人がしばしばいます。その主な原因として、ヨードうがい薬(イソジンうがい薬)の頻回使用と昆布の過剰摂取が挙げられます。

 

ヨードは、細菌、真菌(カビ)、ウイルスなどの感染症の原因となる微生物に対して殺菌および殺ウイルス効果があります。しかし、ヨードうがい薬については、当クリニックのブログ記事「当院における感染症対策と予防接種について」でも述べたように、ヨードうがい薬を使用するよりも水うがいの方が感染予防に優れているという報告があります。(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0749379705002588)

 

またヨードうがい薬は、ウォルフ・チャイコフ効果(大量のヨードが体内に吸収されることにより甲状腺でのヨウ化物イオンの取り込みが著明に低下する現象)により、甲状腺ホルモンの合成が低下して甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。そのため当クリニックでは、ヨードうがい薬の使用はあまり推奨していません。

 

これと同様のことが、昆布の過剰摂取により生じる場合があります。根昆布をつけ込んだ水を毎日摂る民間療法(根昆布療法)や、毎日昆布だしの味噌汁を摂取することで甲状腺機能低下症になることがあるのです。

 

特に、妊婦さんまたは妊娠を考えている女性はより注意が必要です。これは、甲状腺ホルモンが正常範囲内(TSH≦5.0 µU/mL)であっても、わずかな甲状腺機能低下(TSH 2.5~5.0 µU/mL)が妊娠の確率を低下させることが知られているためです。また、流産や早産などのリスクもわずかに増加します。

 

そのため、当クリニックでは妊娠中または妊娠を考えている女性には、一度は甲状腺ホルモンの検査を受けることをお勧めしています。TSHの値によっては昆布の摂取を控えるよう指示し、それでも甲状腺ホルモンが改善しない場合は甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシン)を少量投与する場合もあります。

 

しかし、昆布以外の海藻類については、摂取を制限する必要はありません。なぜなら、昆布の次にヨード(ヨウ素)が多いひじきでも昆布の約1/7、わかめは昆布の約1/20、海苔は昆布の約1/30と、その含有量は少ないからです。

 

したがって、海藻類は一般的に健康に良い食材と考えられますが、ヨード(ヨウ素)の過剰摂取には気をつけましょう。特に、昆布だしを使用することで、知らず知らずのうちにヨード(ヨウ素)過剰摂取していることもあるので注意が必要です。 

 

具体的には、外食などで気がつかないうちにヨード(ヨウ素)を摂取していることも考え、自宅での昆布だしの使用を週に3~4回程度に抑えることが望ましいといえるでしょう。

 

中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科には、甲状腺をはじめとした内分泌疾患の専門医が複数おります。今回お話したような甲状腺機能低下症やその他の内分泌に関する症例でお困りの際は、お気軽に当クリニックへご相談ください。

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