• 2023年9月16日
  • 2024年1月23日

糖尿病の食事療法と当クリニックの栄養指導について

院長コラムの第3回目も糖尿病に関するテーマです。

 

前回のコラムでもお話させていただきましたが、糖尿病治療の基本は薬物治療ではなく、食事療法と運動療法になります。ですが、運動療法と同様、食事療法も具体的にどのようにすれば良いのか分からない方や、食事療法がある程度理解できても実践できないといったご意見を多数いただきます。

 

そのため、今回は食事療法について詳しくお話させていただき、その後に当クリニックの取り組みについてお話させていただきます。

 

近年、糖尿病における食事療法については、糖質制限が注目されています。すぐにその効果が実感できるため、糖質制限を導入しているクリニックも徐々に増えていますが、それが本当に良いのかについて専門家でも賛否は分かれています。

 

私は、糖質制限は短期的な結果を出すのに適していると考えています。しかし、ほとんどの糖尿病患者さんは短期的なものではなく、長期的な結果が求められます。糖質制限の長期的な有効性および安全性が明らかではなく、また糖質制限を継続するのはなかなか難しく、リバウンドしやすいことが知られています。

 

そのため、当クリニックでは糖質制限は原則的には推奨しませんが、比較的ゆるやかな糖質制限であれば続けても問題ないと考えています。

 

また、SGLT-2阻害薬(スーグラ、フォシーガ、ルセフィ、デベルザ、カナグル、ジャディアンス)を服用中に極端な糖質制限を行うことは、糖尿病ケトアシドーシスという重篤な状態のリスクを高める可能性があるとの報告があります。(https://dom-pubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/dom.12848)

そのため、SGLT-2阻害薬を内服される方は、糖質制限を控えた方が良いでしょう。

 

糖尿病の食事療法は、1日3食を出来る限り同じ時間帯に摂取し、目標とする摂取カロリーを順守し、偏りのない食事(炭水化物は約55%、蛋白質は約20%、脂質は約25%)にすることが理想です。

 

ですが、これを毎日実践していくことは容易ではありません。そのため、当クリニックでは運動療法と同様、あまり細かいことは気にせず、ご自身にとって継続することが可能な食事内容の見直しをすることをお勧めしています。「何か1つだけ変えてみよう」という気持ちが大切です。

 

例えば、朝の菓子パンを少しカロリーの少ないものに変えるとか、微糖の缶コーヒーを無糖に変えるとか、食事の食べるスピードを少しだけ遅くするとか、ご飯からではなく野菜やおかずから先に食べるとか、小さなことからで結構です。間食を完全にやめるとか、揚げ物を完全に避けるなどは、継続することが難しいので、最初は頑張りすぎないことが大切です。

小さなことでも、それを積み重ねていくことが食事療法を続けていくコツになります。

 

私がお勧めするのは、白米を雑穀米または玄米に切り替えることです。私自身もこれを実践していますが、雑穀米や玄米は白米に比べてグリセミック・インデックスが低いため、血糖値の急上昇を抑えることができます。これは比較的簡単に実践できるため、毎日続けやすいです。

 

 

「何か1つだけ変えてみよう」という考えを身につけたら、その次は目標とする1日の摂取カロリーを理解し、それを順守するのが良いと思います。食事療法も運動療法と同様、段階的に取り組むことで持続可能で効果的な方法となり、健康への道を歩む手助けとなります。

 

理想的な1日の摂取カロリーは、患者さんの身長によって決まります。 [身長m]×[身長m]×22×27.5(kcal)という式を用いることが一般的です。

例えば身長が163 cmの方の場合、1日の摂取カロリーは約1600 kcal(≒1.63×1.63×22×27.5)となります。このようにして定められた1日の摂取カロリーを意識して食生活のバランスを考えるのが良いです。

 

それに加えて、1日3食を規則正しく摂取することが大切です。朝食を抜いているという方も多くいらっしゃいますが、1日2食になると1回の食事量が増え、食後の血糖上昇が顕著になります。当クリニックでは、朝食をしっかり摂取することを推奨しています。

 

また、夕食を遅い時間に摂ることも避ける必要があります。夜遅くに食事をすると、メラトニンというホルモンの影響などにより、食後の血糖上昇が生じる可能性があるためです。

 

と、ここまで食事療法について長々とお話ししてきましたが、結論として、食事療法をずっと自分一人で継続することはなかなか難しいものです。家族のサポートも当然必要ですし、またこれを教えてくれる人がいることも大切です。

 

当クリニックでは、外来で糖尿病専門医も分かりやすく食事療法についてご説明いたしますが、それだけでは必ずしも十分とは言えません。そのため、食事に関するプロフェッショナルである管理栄養士による栄養指導が大いに役立ちます。

 

当クリニックでは、隔週の月曜午後に管理栄養士による栄養指導を実施しております。お一人に対して約20~30分をかけて、食事に関するご相談やアドバイスを行い、様々な疑問や質問にも丁寧にお答えしますので、どうぞお気軽にご利用ください。

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