• 2024年11月1日
  • 2024年10月22日

高尿酸血症・痛風の治療の重要性と食事療法の5つのポイントについて

糖尿病などの生活習慣病を専門としている中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長の大庭健史です。

 

今回のブログのテーマである「高尿酸血症」という病気は、生活習慣病の中でも軽視されがちな病気です。

 

一部の患者さんは、痛風発作が起きるたびに治療を受けますが、しばらくすると通院を自己判断で中断してしまうことを繰り返しています。

 

このような状況が生じる一因には、医師側から高尿酸血症の治療の重要性を十分に説明できていない点もあると思います。

 

そこで今回は、高尿酸血症の治療の重要性と、その対策について詳しく解説させていただきます。

 

 

 

高尿酸血症とは?

高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が高い状態を指し、放置すると痛風(痛風関節炎)や慢性間質性腎炎などのリスクが高まります。

 

尿酸は、体内でプリン体が分解される際に生成される老廃物で、通常は尿として体外に排出されます。しかし、尿酸が過剰に生成されたり、排泄機能が低下したりすると、血液中の尿酸値が上昇します。

 

健康な成人の尿酸値は7.0 mg/dL以下が正常範囲とされており、これを超えると高尿酸血症と診断されます。

 

高尿酸血症そのものは多くの場合、自覚症状がありませんが、放置すると結晶化した尿酸が関節に蓄積し、急性の炎症を引き起こす「痛風発作」が生じることがあります。また、腎臓にも悪影響を及ぼし、尿路結石や腎機能の低下を引き起こす可能性があります。

 

そのため、健康診断などで高尿酸血症と診断された場合、症状がなくても適切な治療を受けることが必要です。

 

治療の必要性について

「なぜ高尿酸血症は治療しなければならないのか?」については、主に3つの理由が挙げられます。

 

①痛風発作

痛風発作は突然の強烈な関節痛を伴うもので、多くの場合、足の親指の関節が腫れて赤くなります。この発作は数日間続くことがあり、歩行や仕事、日常生活に大きな支障をきたします。さらに発作を繰り返すことで、骨や関節の破壊や変形が進行することもあります。こうしたリスクは、尿酸値を適切に管理することで軽減でき、生活の質(QOL)を維持することが可能です。

     

    ②腎臓への影響

    高尿酸血症では、尿酸結晶が腎臓内に蓄積することで尿路結石を引き起こします。また、結晶が腎臓の深部の髄質に蓄積することで慢性間質性腎炎を発症し、腎機能が悪化する可能性があります。さらに慢性的な高尿酸血症が続くと、腎不全に至ることもあります。腎臓は、体内の老廃物をろ過して尿として排出することで血液をきれいにするという重要な役割を果たしています。高尿酸血症の治療は、大切な腎臓を保護するために必要なことになります。

     

    ③動脈硬化のリスク

    日本人の心血管疾患予防に関する大規模研究「EPOCH-JAPAN研究」によると、尿酸値が高い上位20%の人は、尿酸値が低い下位20%の人に比べ、男性では約28%、女性では約51%も心血管疾患による死亡リスクが高いと報告されています。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/23/6/23_31591/_pdf)

    これは、糖尿病など他の生活習慣病と比べるとリスクが低い印象を受けるかもしれませんが、高尿酸血症も心血管疾患のリスクを高めることに変わりはないため、早期の治療が望ましいと考えられます。

     

    食事療法の重要性について

    高尿酸血症の治療には、薬物療法だけでなく食事療法も非常に重要です。

     

    食事療法により、体内での尿酸の生成を抑え、体外への排泄を促進することができます。ここでは、食事療法の5つのポイントを解説します。

    1. プリン体の摂取量を抑える

    プリン体は体内で尿酸に変わるため、プリン体を多く含む食品を摂りすぎると尿酸値が上昇します。特に以下の食品はプリン体が多いため、摂取量を抑えることが推奨されます。

    肉類・内臓:生ハム、サラミ、レバー、モツ、白子

    魚介類:干物、太刀魚、イワシ、アジ、カツオ、マグロ、牡蠣など

    魚卵:明太子、キャビア

    甲殻類:エビ、カニ

     

     

    2. アルコールの過剰摂取を控える

    アルコールは尿酸の生成を増やすだけでなく、体外への排泄も妨げます。特にビールはプリン体を多く含むため、血液中の尿酸値を上昇させると報告されています。(https://www.nature.com/articles/1601061)

    アルコールを摂取する際は、少なくとも週に1回以上の休肝日を設け、1日1合未満を守ることが重要です。

     

     

    3.甘味飲料や果物ジュースを控える

    果物に多く含まれるフルクトース(果糖)は、代謝される時にプリン体の分解を促進し、血中の尿酸値を上げることが報告されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10206448)

    そのため、フルクトースを多く含む甘味飲料や果物ジュースは控えた方が良いです。甘い果物の過剰摂取も避けることが推奨されます。なお、コーヒーは痛風のリスクを軽減するという報告があります。(https://bmjopen.bmj.com/content/6/7/e009809.long)

     

    4. 野菜を多く摂取する

    野菜は低プリン食品が多く、尿酸値に悪影響を与えることが少ないため、積極的に摂取できます。ほうれん草、アスパラガス、カリフラワーなどは比較的プリン体が多い野菜ですが、適量であれば問題ありません。

     

     

    5. 水分摂取を増やす

    十分な水分摂取により、尿量が増えて尿酸が排出されやすくなります。健康な成人の1日の尿量はおよそ1.0~1.5リットルと言われています。一方、高尿酸血症の場合は、1日の尿量を2リットル以上に保つように水分(1日2リットル以上)を摂取することが推奨されます。特に汗をかきやすい夏場や運動後は、こまめに水分補給を行いましょう。

     

    最後に

    高尿酸血症は、無症状であっても放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。

     

    適切な治療と食事療法を行うことで、痛風や腎臓の障害などを予防し、健康的な生活を維持することができます。

     

    健康診断で高尿酸血症などの生活習慣病を指摘された場合は、早めに医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。

     

    なお生活習慣病の治療についてくわしく知りたい方は、当クリニックのホームページ「生活習慣病」を参考にしていただければと思います。

     

    (文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

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