• 2023年9月3日
  • 2024年1月23日

血糖変動とHbA1cについて

院長コラムの第1回目は、院長が専門としている糖尿病に関するテーマです。

 

糖尿病の治療目標には、主にHbA1cという指標が用いられています。日本の熊本スタディをはじめとする世界各国の研究結果から、糖尿病の様々な合併症を予防するためにはHbA1cを7.0%未満に抑える必要があるとされています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7587918/)

 

一方、DECODE研究という大規模な臨床試験では、死亡率と空腹時血糖値の高さには関連はないが、ブドウ糖投与 2 時間後の血糖値は高くなるほど死亡率が増加する傾向があると報告されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10526732/)

 

同様にDECODE研究のアジア版として実施されたDECODA研究でも、心筋梗塞や狭心症などの死亡リスクについて、空腹時血糖値との関連性はあまり見られず、ブドウ糖投与 2 時間後の血糖値が高い場合に高まることが報告されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14985967/)

 

つまり、食後高血糖(グルコーススパイク)の程度を把握することが、糖尿病治療において重要であることが示唆されています。しかしながら、HbA1cは平均血糖値を反映する指標であるため、通常の血液検査だけでは食後高血糖(グルコーススパイク)を正確に評価することが難しい場合があります。

 

そのため、当クリニックではアボット社のフリースタイルリブレを積極的に導入して、血糖トレンド(血糖推移)を把握することに努めてまいります。そうすることで、点での評価ではなく、以下のような線(グラフ)で血糖値をしっかりと把握することができます。 

 

アボットジャパン社のホームページより

 

我々が重視している指標の一つにTIR(time in range)というものがあります。TIRは、血糖値が70~180 mg/dLの範囲内にある時間の割合を示し、これが70%以上になるようにことが望ましいとされています。

 

また、HbA1cやTIRのコントロールと同等、もしくはそれ以上に重要なことは低血糖を回避することです。なぜなら、ACCORD試験という大規模な臨床試験などの結果から、低血糖は死亡のリスクを高めることが指摘されているからです。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18539917/)

 

そのため、当クリニックでは低血糖を回避しつつ、HbA1cを7.0%未満に抑えるだけでなく、TIRを70%以上にすることを治療目標としております。

 

しかしながら、フリースタイルリブレにはいくつかの問題点があります。一つは、フリースタイルリブレに表示される血糖値が、実際の血糖値と約9.2%程度の誤差があることと、約5~10分のタイムラグが生じることです。

 

もう一つは、腕に装着している円盤状のデバイスに、血糖データを読み取るためのスマートフォンまたは読み取り機を頻繁にかざさないといけないことです。8時間以上放置していると、血糖値のグラフ(波形)が一時的に表示されなくなってしまいます。

 

さらに、フリースタイルリブレはインスリン治療を受けていない方は、保険適応外になります。そのため、インスリンを使用していない方がこれを使用すると、医療費が上がってしまいます。

 

このため、当クリニックではインスリン治療を受けていない患者さんについては、従来通り血液検査で得られた血糖値とHbA1cの値に基づいて評価してまいります。ただし、保険適応外であってもフリースタイルリブレでの血糖管理を希望される方については、フリースタイルリブレを自費で購入していただくこと可能です。

 

当クリニックでは、最新の治療を取り入れ、糖尿病治療の質を高め、糖尿病合併症の予防に最善を尽くします。糖尿病についての治療方針や血糖値が気になるなどお困りのことがありましたら、まずはお気軽にご来院ください。

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