• 2023年9月26日

脂質異常症(高LDLコレステロール血症)における食事療法について

中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長の大庭健史です。今までは主に糖尿病に関するコラムを書いてきましたが、今回は生活習慣病の一つである脂質異常症についてお話させていただきます。

脂質異常症は、以前は「高脂血症」と呼ばれていました。ただHDLコレステロール値が低い状態でも、動脈硬化性疾患が生じやすいため治療は必要になります。こうしたことから高脂血症という名称は不適当ということで、2007年4月の動脈硬化性疾患予防ガイドラインの改訂にともない脂質異常症と呼ばれるようになりました。

脂質異常症の治療については、糖尿病などの生活習慣病と同様、食事療法がとても大切です。脂質異常症には大きく分けて、高LDLコレステロール血症、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症があります。この3つの状態については、それぞれに合った食事療法があります。

そのため、今回は脂質異常症コラム1回目として高LDLコレステロール血症に対する食事療法ついてお話させていただきます。

高LDLコレステロール血症は、ほとんどの場合で自覚症状を認めません。そのため、高LDLコレステロール血症を健康診断などで指摘されても、多くの方がその状態を放置してしまっているのが現状です。

しかしながら、高LDLコレステロール血症の方では、LDLが血液中に余っているため、知らず知らずのうちに血管の内側から血管の壁に入っていきます。

血管の壁の中に入ったLDLは、酸化ストレスなどにより酸化LDLに変化してしまいます。この血管内に侵入した酸化LDLを、白血球の一種であるマクロファージが異物と認識して誤って食べてしまいます。そうなったマクロファージはコレステロールをため込んでしまいます。

コレステロールをため込んだマクロファージは、本来の機能を失い泡沫細胞に変化します。この泡沫細胞は、体にとって有害な活性酸素やサイトカインなどを放出して動脈硬化を進行させます。また、泡沫細胞が細胞死して血管壁に多量のコレステロールが貯留することで、血管内のプラーク(動脈硬化巣)が破綻しやすくなります。

この血管内のプラーク(動脈硬化巣)が破綻することで血栓が形成され、それが剥がれて狭い血管に詰まることで心筋梗塞や脳梗塞などに至るため、こうなる前にしっかりと予防することが大切です。

そのようなことから、LDLコレステロールの改善は必要不可欠となります。近年、高LDLコレステロール血症は「the lower, the better(低ければ低いほど良い)」と言われ、薬物治療が積極的に行われています。

しかしながら、食事療法をしっかり行えば薬物治療が不要になる場合もありますし、また食事療法が不十分であれば薬物治療の効果も十分発揮されなくなります。そのため、高LDLコレステロール血症の治療に対して食事療法はとても重要な役割を果たします。

具体的な食事療法については、まずは飽和脂肪酸とコレステロールを多く含む食品(卵黄、乳製品、肉の脂身・内臓・皮)を控えるのが良いとされています。

特に卵黄にはコレステロールが多く含まれています。卵1個で1日のコレステロール摂取量の目安である200 mgを少し超えてしまいます。卵の白身は良質なタンパク質なので、卵を食べてはいけないというわけではありませんが、1日1個までにするのが良いでしょう。

また、トランス脂肪酸の摂取を控えることも重要です。トランス脂肪酸とは、主に食品の加工や調理段階などで生成されるもので、マーガリンやショートニングなどを使用する加工食品(お菓子や菓子パンなど)に多く含まれます。

このトランス脂肪酸を、多量に摂取し続けるとLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少します。その結果として動脈硬化が進行し虚血性心疾患のリスクが高まるとの報告があり、アメリカでは2018年6月からトランス脂肪酸を食品に添加することは原則禁止となっています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19424218)

一方、高LDLコレステロール血症を改善させるために、食物繊維と植物ステロールを多く含む食品を増やすと良いとされています。そのため野菜、きのこ、大豆製品、海藻類などを多めに摂取することをおすすめします。

ここまで高LDLコレステロール血症の食事療法について述べてきましたが、食事療法をご自分一人で継続していくことは容易ではありません。ご家族の支援も当然必要ですし、また食事療法について教えてくれる人も必要です。

当クリニックでは、外来で専門の医師が食事療法について分かりやすくご説明いたします。また、食事と健康についてのプロフェッショナルである管理栄養士による栄養指導も行っております。

隔週の月曜14時30分から18時まで管理栄養士による栄養指導を行っており、食事に関するご相談やアドバイスに、お一人につき約20~30分をかけて様々な疑問や質問に丁寧にお答えいたします。ぜひご利用になってみてください。

次回のブログでは、脂質異常症コラム2回目として高中性脂肪血症と低HDLコレステロール血症の食事療法についてお話させていただきます。

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