- 2026年4月14日
- 2026年3月19日
2021年6月に保険適用|SASの新しい治療「舌下神経電気刺激療法」とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まることで、日中の強い眠気や集中力低下を引き起こすだけでなく、高血圧症や心筋梗塞、脳卒中といった心血管疾患のリスクを高める重要な疾患です。

当クリニックでも積極的に診断・治療を行っており、中等症以上の患者さんにはCPAP(持続陽圧呼吸療法)を中心とした治療を提供しています。
CPAPは非常に有効な治療法ですが、すべての患者さんが継続できるわけではありません。マスクの違和感や圧迫感、機械音への不快感などにより、使用が困難となるケースも少なくありません。
これまで当クリニックでは、CPAP治療が難しい場合、減量を目的とした食事・運動療法やマウスピースの作成を提案してきました。
しかし、CPAPが必要となる比較的重症の患者さんでは、これらの方法だけでは十分な改善が得られないことも多いのが現状です。
新しい選択肢「舌下神経電気刺激療法」とは
このような背景の中で登場した新しい治療法が「舌下神経電気刺激療法」です。日本では2021年に保険適用となり、近年注目を集めています。
もともとは欧米で研究・開発が進められ、2010年代に効果が確認されて実用化された、比較的新しい治療法です。
従来のように外から空気を送り込むのではなく、体内に埋め込んだ装置によって気道の閉塞そのものを防ぐ、これまでとは異なるアプローチが特徴です。
その効果についても研究が進んでおり、2023年の臨床試験では、中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群の患者さんで、無呼吸の程度(AHI)がしっかりと改善することが確認されています。また、その効果は治療開始から1年以上経過しても持続することが示されています。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10080405)
具体的には、鎖骨の下に小型の刺激装置(ペースメーカーに似た機器)を植え込み、呼吸のタイミングに合わせて舌の動きをコントロールする神経に弱い電気刺激を与えます。

(引用:東京新聞デジタル)
これにより舌が前に出て、睡眠中に気道がふさがるのを防ぎます。就寝前にリモコンでスイッチを入れるだけで作動し、自然な呼吸をサポートします。
CPAPのようにマスクを装着する必要がないため、装着のわずらわしさなどで治療を続けるのが難しかった方にとって、新しい選択肢となります。
適応となる患者さんは限られます
一方で、この治療はすべての患者さんに適応となるわけではなく、安全性と有効性を担保するために、以下の条件をすべて満たす必要があります。また、これらの条件を満たしていても、その他の医学的理由により適応外と判断される場合があります。
・18歳以上であること
・中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(AHI 20以上)であること
・CPAP療法の継続が困難であること
・BMIが30未満であること
・明らかな解剖学的異常(高度の扁桃肥大など)がないこと
・中枢性無呼吸の割合が25%未満であること
・薬物睡眠下内視鏡検査において不適応と判断されないこと
特に重要なのが、「薬物睡眠下内視鏡検査(DISE)」による評価です。これは、実際の睡眠に近い状態を再現し、気道の閉塞様式を直接観察する検査であり、その結果に基づいて本治療の適応可否が最終的に判断されます。
適応の判断には専門的な入院検査が必要です
舌下神経電気刺激療法の適応を最終的に判断するためには、専門的な入院検査が必要となります。特に薬物睡眠下内視鏡検査は高度な設備と専門的な評価が求められるため、一般外来で実施できるものではありません。
そのため、「薬物睡眠下内視鏡検査で不適応と診断されていないこと」という条件については、当クリニックではなく紹介先の高度医療機関にて確認されます。適応の可否は、専門施設での詳細な評価を経て最終決定されます。
当クリニックでの対応と医療連携について
当クリニックでは、まず外来での診療や検査を通じて、舌下神経電気刺激療法の適応となる可能性を評価します。
そのうえで、CPAP治療がうまく継続できない方の中で、適応条件を満たす可能性がある患者さんには、本治療をご提案しています。
適応が見込まれる場合には、当クリニックと医療連携を行っている高度医療機関へご紹介いたします。紹介先では入院のうえ精密検査を行い、その結果をもとに適応が最終的に判断されます。適応と判断された場合は、紹介先の医療機関で治療が行われます。
治療を諦めないための新しい選択肢
睡眠時無呼吸症候群の治療で大切なのは、無理なく継続できる方法を見つけることです。CPAPが難しいからといって治療を中断してしまうと、将来的な心血管リスクが高い状態が続いてしまいます。
舌下神経電気刺激療法は、適応が限られる治療ではありますが、これまで十分な治療が行えなかった患者さんにとって、新たな可能性を広げる選択肢の一つです。
いびきや無呼吸を指摘された方、日中の眠気でお困りの方、そしてCPAP治療がうまくいかずお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。患者さん一人ひとりの状態に応じて、最適な治療方針をご提案いたします。
また、睡眠時無呼吸症候群については、当クリニックのホームページ内「睡眠時無呼吸症候群」のページに詳しく掲載しておりますので、あわせてご覧ください。
ご不明な点があればお気軽にご相談ください。受診をご希望の方は、予約ページよりご予約いただけます。
(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)
