睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群のイメージ写真

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる病気です。10秒以上呼吸が止まる状態を無呼吸といい、睡眠中に1時間あたり平均5回以上の無呼吸が見られる場合はこの病気と診断します。
睡眠中に何度も呼吸が止まることは、睡眠の質を低下させ、昼間の眠気や体のだるさといった症状を引き起こし、日常生活に影響を及ぼすことがあります。
日本国内における睡眠時無呼吸症候群の患者さんは約500万人(男性約9%、女性約3%)と推定されていますが、そのうち治療を受けているのは1割程度と言われています。この病気は、治療によって大幅に改善することが多いため、以下のような症状がある場合は睡眠時無呼吸症候群を疑って早めに受診することが大切です。

  • いびきをかく
  • 息苦しくなって目が覚める
  • 熟睡感がない
  • 起床時の頭痛
  • 日中のだるさ
  • 日中の強い眠気

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である上気道が狭くなることで生じます。肥満のある方は、上気道の周囲に脂肪がついていることから上気道が圧迫されてやすいため睡眠時無呼吸症候群になりやすいことが知られています。
ただし、顎が小さいことが原因で睡眠時無呼吸症候群になる方も少なくなく、やせている方でも睡眠時無呼吸症候群になることがあります。
また、扁桃腺が大きい方、舌が大きい方、鼻が曲がっている方、飲酒される方、睡眠薬を服用される方などに多いとされています。

睡眠時無呼吸症候群が疑われた方の
当クリニックでの診療の流れ

医師による問診と診察を行います。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、検査会社からご自宅に配送するウォッチパット(簡易型アプノモニター)を予約させていただきます。ウォッチパットがご自宅に届きましたら、それを装着して一晩寝ていただき(簡単に装着できます)、翌日以降にウォッチパットを検査会社までご返送ください。2営業日ほどで検査結果がクリニックに届きますので、お手数ですが結果を聞きにクリニックまでお越しください。1時間あたりの無呼吸と低呼吸の平均回数をAHI(無呼吸・低呼吸指数)といい、AHIが40以上の場合はCPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療が必要な睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
AHIが20以上40未満であった場合には、PSG(ポリソムノグラフィー)による精密検査が必要になります。こちらもご自宅で行える検査で、AHIが20以上でCPAPの適応となります。もしも睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、当クリニックでCPAPによる治療を行うことができますので、医師にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群が疑われた方の当クリニックでの診療の流れ

睡眠時無呼吸症候群は
なぜ治療するの?

睡眠時無呼吸症候群は、単に睡眠中に呼吸が止まる病気ではありません。放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こすリスクがあり、早期の診断と適切な治療が重要です。
血液中の酸素が不足することで、脳や心臓に負担がかかり、特に高血圧症、心不全、不整脈、脳卒中、虚血性心疾患など、重大な合併症のリスクが増加します。睡眠中に繰り返される低酸素状態と、それに伴う交感神経の過剰な活性化が、これらの病気の発症や悪化に深く関与しています。
また、2型糖尿病の発症リスクも高まります。睡眠時無呼吸による酸素不足はインスリン抵抗性を悪化させ、血糖コントロールに悪影響を及ぼします。すでに糖尿病を持っている方は、睡眠時無呼吸症候群を併発することで血糖管理がさらに難しくなり、合併症のリスクが増します。
さらに、認知症のリスクも指摘されています。慢性的な低酸素状態と睡眠の質の低下は、脳機能に悪影響を与え、認知機能の低下や認知症の発症リスクを高める可能性があると報告されています。
これらの合併症を予防し、健康寿命を延ばすためにも、睡眠時無呼吸症候群は早期に発見し、適切に治療することが重要です。当クリニックでは、簡易検査から専門的な治療まで幅広く対応していますので、お気軽にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状の重さや患者さんの健康状態に応じて、さまざまな方法があります。ここでは主な治療法をご紹介いたします。

1. 軽症~中等症(AHI<20)の場合:マウスピース治療

AHIが20未満の軽症または中等症の場合、マウスピースを使った治療で症状や生活の質(QOL)の改善が期待できるケースが多くみられます。マウスピースは、就寝中に装着して下あごをわずかに前に出すことで、舌の付け根を持ち上げ、気道を広げ、呼吸をスムーズに保つ効果があります。
マウスピース治療をご希望される方には、当クリニックからマウスピース作製に慣れた外部の歯科クリニックをご紹介しています。そこで、個々の口の形に合わせたマウスピースを作成し、使用方法について詳しく指導を受けていただきます。

2. 中等症(AHI≧20)~重症の場合:CPAP治療

AHIが20以上の中等症または重症の場合には、CPAP療法が最も効果的な治療方法とされています。CPAPは、就寝中にマスクを装着し、機械から一定の空気圧を送ることで気道を押し広げ、閉塞を防ぐ治療です。これにより無呼吸や低呼吸の回数が減少し、安定した呼吸を確保できます。
CPAP治療により、日中の強い眠気や倦怠感が改善されるだけでなく、高血圧症、虚血性心疾患、脳卒中などのリスクを低減できることも知られています。
CPAP治療をご希望の方は、ぜひ当クリニックにご相談ください。患者さんそれぞれの症状に合わせた機器をご提案し、使用方法についても丁寧にサポートいたしますので、安心して治療を続けていただけます。

3. その他の治療法

生活習慣の見直しも、治療の重要な一環です。特に肥満がある場合は、体重を減らすことで気道への圧迫が軽減され、症状の改善が期待できます。また、アルコールや睡眠薬の摂取を控えることも、無呼吸の発生を減らすうえで有効です。さらに、睡眠時無呼吸症候群の原因がアデノイドや扁桃の肥大である場合には、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術などの外科的治療が有効となることがあります。

睡眠時無呼吸症候群の治療では、症状に応じて最適な方法を選ぶことがとても大切です。早期に適切な治療を開始することで、健康を守り、生活の質を大きく向上させることができます。当クリニックでは、患者さん一人ひとりに最適な治療をご提案しています。特に、生活習慣病(糖尿病高血圧症など)を専門としているため、これらのリスクや悪化要因となる睡眠時無呼吸症候群の治療に力を入れています。どうぞお気軽にご相談ください。
なお、睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病の関係については、こちらをご覧ください。