アレルギー・花粉症について
アレルギーとは、特定の抗原に対して過剰な免疫反応を起こし、身体に様々な障害が発生する病気です。本来、私たちの身体には体内に侵入したウイルスや細菌、異物を排除しようとする免疫機能が備わっています。しかし、ときには特定の抗原に対して免疫機能が過度に反応してしまい、身体に好ましくない症状を引き起こしてしまう事があります。
アレルギー疾患を治療します
花粉症やアレルギー性鼻炎など、アレルギー関連の病気に罹患される方が近年増加しています。一般的には抗ヒスタミン薬などの対症療法が行われますが、スギ花粉やアレルギー性鼻炎の原因となるダニに関しては、舌下免疫療法(減感作療法)という、アレルギー反応を起こしにくい体質に改善していく治療法があります。
下記の症状の方は受診を
- 鼻がムズムズする
- くしゃみが止まらないことがある
- 鼻づまりで息が苦しい
- 喉がかゆい、イガイガする
- 肌がピリピリする、痒くなる
- 目がかゆい など
花粉症
花粉症とは、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となり、鼻水やくしゃみなどのアレルギー症状を起こす病気で、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。現在、日本人の約38.8%がスギ花粉症という報告があります。
花粉の種類
これまでに60以上の花粉アレルギーが報告されており、そのうち約50種類が花粉症の原因とされています。花粉症の発症の約70%はスギ(ヒノキ科)によるものと推定されています。これは、戦後に森林資源の回復を目的に大量にスギが植林された結果です。また、ヒノキ(ヒノキ科)もスギと同じくヒノキ科に属しており、スギ花粉症患者の約7~8割がヒノキにも反応すると言われています。
それ以外にも、カモガヤ(イネ科)、ブタクサ(キク科)、ヨモギ(キク科)、カナムグラ(アサ科)などが花粉症の原因となります。そのため、ほぼ1年中何らかの花粉が飛散しています。自分がどの花粉に反応するかを知り、その花粉がいつ飛散するかを把握して早めに治療することが重要です。以下は、当クリニックがある東京における花粉の飛散時期の目安ですので、花粉症の方はご参考にしてください。
(出典:日本花粉学会会誌 2020; 65: 55-66)
花粉症の原因
花粉が鼻や喉の粘膜などに付着すると、マクロファージという免疫細胞に取り込まれます。そして何らかの理由で有害な異物と認識されると、花粉に対するIgE抗体が作られます。このIgE抗体は肥満細胞に結合し、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエータが分泌されます。ヒスタミンが主に神経を刺激して鼻水やくしゃみなどを引き起こし、ロイコトリエンが主に血管を刺激して鼻づまりなどを誘発します。
花粉症の症状
花粉症の3大症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりになります。
くしゃみは、鼻の中に入った花粉を取り除こうとする反応であり、風邪などの感染症の時より回数も多く、多くの花粉症患者さんが悩まされる症状です。鼻水は、感染症の時のような少しネバネバしたものとは違い、水のようなサラサラした透明のものが止まらずに出てきます。鼻づまりは、鼻の粘膜が腫れて空気の通り道が狭くなることで生じます。その結果として口呼吸になりやすく、口腔内が乾燥して咳や口に渇きなどの症状が出やすくなります。また、匂いが感じにくくなるため食べ物の味が分かりにくくなる場合もあります。
これ以外に目の症状(かゆみ、涙、充血など)や皮膚のかゆみを伴うこともあります。そして、微熱、頭痛、倦怠感などの症状が出ることもあるため、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザウイルス感染症などの感染症と区別がつきにくい場合もあります。
また花粉症患者さんの中には、特定の野菜や果物などを食べた後、数分以内に、唇、舌、口の中や喉にかゆみやむくみなどの症状が現れることがあります。これは粘膜における接触蕁麻疹であり、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome)と呼ばれています。シラカバ花粉症とハンノキ花粉症の方では、約40%に口腔アレルギー症候群の合併を認めます。また、スギ花粉症でも10~20%の方に合併するとされています。これは、花粉にあるアレルギーのアレルゲン(原因物質)と、野菜や果物などに含まれるアレルゲンが似ていることが原因になります。そのため、特定の野菜や果物を食べてこのような症状が出た場合は、早めに当クリニックにご相談ください。
花粉症の治療
治療の基本は、まずアレルゲンの回避と除去になります。まずは、花粉の飛散情報に注意し、飛散の多い時の外出をなるべく控え、窓やドアの開閉は最小限にしましょう。また、外出する時はメガネやマスクなどを着用し、帰宅した後は髪や服などに付着した花粉を払い、手と顔を洗ってうがいをしましょう。そして、こまめに家の中を掃除することも大切です。
薬物療法については、抗ヒスタミン薬による治療が基本になります。多くの方はこの治療だけで十分ですが、改善が十分ではない場合は漢方薬(小青竜湯など)、ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド薬などを追加します。さらに、目の症状(かゆみや涙など)が強い場合には抗ヒスタミン薬やステロイド薬の点眼薬を追加し、鼻の症状(鼻水や鼻づまりなど)が強い場合にはステロイド薬や血管収縮薬などの点鼻薬(鼻スプレー)を追加することもあります。
また、花粉症の根本的な治療として舌下免疫療法(減感作療法)があります。これについては、次の項目で解説します。
舌下免疫療法(減感作療法)とは
舌下免疫療法(減感作療法)とは、舌の下にアレルギーの原因物質を含むエキスを投与してアレルギー症状を治したり、長期間にわたって症状を軽減したりする効果がある治療法です。従来の皮下免疫療法に比べて、重篤な副作用が少なく、安全性が高いのが特徴です。
当クリニックでは、スギ花粉とダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法を行っております。治療を希望される方は、まず血液検査でスギ花粉やダニを含むアレルゲン(アレルギーの原因物質)に対する特異的IgE抗体の量を測定します。スギ花粉またはダニに対する抗体の量が多い場合は、舌下免疫療法の適応となります。ただし、他のアレルゲンにも高い抗体反応が見られる場合、治療効果が十分に得られない可能性もあります。舌下免疫療法について詳しく知りたい方は、以下のホームページをご覧ください。
アレルギー Q&A
- 舌下免疫療法(減感作療法)は、どんなアレルギーにも有効なのですか?
- スギ花粉症とアレルギー性鼻炎に有効な治療法です。他のアレルギー疾患にはあまり有効ではありません。
- 舌下免疫療法(減感作療法)はすぐに効果が現れますか?
- 残念ながら、すぐに効果が現れるわけではありません。個人差がありますが、継続的に行うことで3か月から1年程度経過すると効果が現れ始め、3年以上継続することでしっかりとした効果が期待されます。治療期間を短くしてしまうと、効果が持続しづらいとされており、当クリニックでは4~5年にわたる治療を推奨しています。
- 舌下免疫療法(減感作療法)を行うと症状は改善しますか?
- 約70~80%の方が寛解もしくは症状が改善するとされています。
- スギ花粉の舌下免疫療法はいつから開始できますか?
- スギ花粉が飛散している期間中に治療を開始することはできません。通常、スギ花粉が飛散していない6月から12月の間に開始することが一般的です。
- スギ花粉の舌下免疫療法を開始したら、通院の頻度はどのようになりますか?
- まず、シダキュア2000 JAU錠という低用量の薬を1週間服用していただき、その後はシダキュア5000 JAU錠に切り替えます。治療開始後、最初の1~2回は2週間ごとの通院になります。その後、重大な副作用が見られない場合、月に1回程度の通院になります。
- ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法を開始したら、通院の頻度はどのようになりますか?
- まず、ミティキュア3300 JAU錠という低用量の薬を1週間服用していただき、その後はミティキュア10000 JAU錠に切り替えます。治療開始後、最初の1~2回は2週間ごとの通院になります。その後、重大な副作用が見られない場合、月に1回程度の通院になります。
- スギ花粉とダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法を同時に開始できますか?
- 副作用のリスクが高まるため、同時に開始することはできません。ただし、4週間以上の間隔をあければ、もう一つの舌下免疫療法を開始することも可能です。
気管支喘息とは
気管支喘息とは、気管支の粘膜に慢性的な炎症が持続し、様々な刺激によって気管支が過敏に反応して発作的に気管支が狭くなる疾患です。小児では、約5~10%のお子さんが気管支喘息になり、その約70~90%がアトピー性喘息とされています。ハウスダスト、ペットの毛、花粉などによるアレルギー反応が主な原因とされています。多くの患者さんは2~3歳までに気管支喘息を発症し、思春期の頃に自然に良くなりますが、約20~30%の患者さんは大人になっても寛解しないとされています。
一方、大人になってから気管支喘息が発症することもあります。こちらの場合、非アトピー型喘息が多く、アレルギー反応が原因ではありません。呼吸器感染症(ウイルスなど)、大気汚染物質(排気ガスやPM2.5など)、タバコ、ストレス、冷たい空気、運動(特に寒い時)などが原因とされています。
治療については、アトピー型も非アトピー型も基本は同じで、吸入薬による治療が中心になります。治療の基本は吸入ステロイド薬であり、これを毎日吸入することで気管支の炎症を抑え、喘息発作を予防します。それに加えて気管支拡張剤を追加することで、狭くなっている気管支を広げて呼吸を楽にします。
当クリニックでは、急性でかつ重症の気管支喘息を除いて治療を行っております。気管支喘息でお悩みの方は、当クリニックの医師にご相談ください。
気管支喘息 Q&A
- 気管支喘息はアレルギーが原因ですか?
- 小児ではアレルギー性(アトピー型)が多いですが。大人ではアレルギー性ではないことが多いとされています。
- ヒューヒュー、ゼーゼーがおさまれば気管支喘息は治ったのですか?
- 気管支喘息は、慢性の炎症により気管支が過敏となる疾患です。そのため、ヒューヒュー、ゼーゼーの症状が収まったからといって気管支喘息が完治したわけではありません。気管支喘息は継続的な管理が必要で、症状が改善しても治療を自己中断しないようにしましょう。
- ステロイドの副作用が怖いので、気管支喘息の発作が出た時だけ治療すれば良いですか?
- ステロイド吸入薬は、飲み薬とは異なり副作用は少なく、安全性が高いです。むしろ気管支喘息にも関わらずステロイド吸入薬を使用しないと、リモデリング(再構築)によって気管支が狭くなったまま元の状態に戻らなくなります。したがって、気管支喘息は発作がない時から適切に治療することが大切です。
- 気管支喘息の吸入ステロイド薬は一生使用しなければならないのですか?
- 吸入ステロイド薬を減量し、喘息発作が数年起こらないようであれば薬剤を中止することは可能です。ただし、自己判断で吸入ステロイド薬を中止しないでください。医師の指導の下で薬物調整をすることが重要です。
- 気管支喘息は治りますか?
- 小児の気管支喘息は、大人になるまでに寛解もしくは治癒することが多いです。ただし、大人になっても小児喘息が改善しない、もしくは大人になってから発症した気管支喘息は、残念ながら治癒が難しいとされています。そのような場合、喘息発作が起きないようにコントロールすることが重要です。
- 胸やけがあるのですが、気管支喘息には良くないのですか?
- 胸やけは、気管支喘息の症状を悪化させる要因です。もし、これが胃食道逆流症(GERD)の症状である場合、胃酸を抑える薬(PPIやP-CABなど)を使ってしっかり治療することが大切です。
- 咳止めを使用しても1か月以上咳が続きます。風邪でしょうか?
- 咳のきっかけは風邪のことが多いですが、1ヶ月以上続く場合は咳喘息を疑います。咳喘息は、ヒューヒューまたはゼーゼーはせずに、痰が絡まない咳(空咳)のみで咳止めが効きづらい病気です。このような場合には、吸入ステロイド薬と気管支拡張剤が有効です。