原発性アルドステロン症
原発性アルドステロン症は、二次性高血圧症の中で最も多く認められる疾患で、高血圧症の約5~10%を占めています。日本の高血圧患者は約4300万人いると推定されているため、原発性アルドステロン症の患者数は約200~400万人と考えられます。この疾患は軽度から重度の低カリウム血症を伴うことが多く、治療に対して抵抗性を示すことが比較的多いです。さらに原発性アルドステロン症は、本態性高血圧症よりも動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)、心房細動、慢性腎臓病などが高頻度に発生するため、適切な診断と治療が大切となります。
原発性アルドステロン症の検査・診断
原発性アルドステロン症は、血液検査を行わなければ本態性高血圧症との鑑別が困難であり、高血圧患者には積極的にスクリーニング検査を行うことが望ましいとされています。スクリーニング検査では、アルドステロンとレニンという2つのホルモンの比が100以上かつ血中アルドステロン値が60 pg/mL以上で原発性アルドステロン症を疑います。原発性アルドステロン症が疑われた方は、カプトプリル負荷試験と生理食塩水負荷試験を実施し、いずれかが陽性であれば原発性アルドステロン症と診断されます。なお、より詳しい説明についてはこちらをご覧ください。
原発性アルドステロン症の分類と治療
原発性アルドステロン症には、大きく分けて2つのタイプがあります。1つは、副腎腫瘍が原因となるタイプのアルドステロン産生腺腫で、もう1つは両側の副腎全体からアルドステロンが過剰分泌されるタイプの特発性アルドステロン症になります。
アルドステロン産生腺腫は、良性腫瘍で左右どちらかにできるものが多く、また特発性アルドステロン症と比較して重度の高血圧と低カリウム血症を伴っていることが多いです。この疾患については手術で完治することが期待できますが、本態性高血圧症を合併していると完治しない場合もあります。
特発性アルドステロン症は、両側の副腎からアルドステロンが過剰に分泌される病気です。こちらはアルドステロン産生腺腫と比較して軽症のことが多いですが、手術による完治は期待できないため、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)による薬物療法が基本になります。治療については、血圧をしっかり下げることに加え、レニンというホルモンが増えてくるようにすることが求められます。
アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症のどちらのタイプかを診断するには、副腎静脈サンプリングという検査が必須になります。当クリニックではアルドステロン産生腺腫の可能性が高く、かつ手術を希望される患者さんには、その検査ができる医療連携を結んでいる高度医療機関などを紹介いたします。
褐色細胞腫
褐色細胞腫は、腎臓の上にある副腎という臓器のうち、内側の「副腎髄質」から発生する腫瘍です。副腎髄質は、体の活動性を高めるホルモンであるアドレナリンやノルアドレナリン(総称してカテコラミン)を作っています。
褐色細胞腫では、このカテコラミンが過剰に分泌されるため、高血圧、動悸、頭痛、多汗、便秘、体重減少、血糖値の上昇などの症状がみられます。これらの症状が発作的に強く出て、命に関わるような危険な状態(褐色細胞腫クリーゼ)をきたすこともあります。
また、副腎以外に発生した同様の腫瘍はパラガングリオーマと呼ばれ、褐色細胞腫と同様にホルモンを過剰に分泌することがあります。
褐色細胞腫の検査・診断
高血圧があり、褐色細胞腫の可能性が否定できないと判断された場合には、まず血液検査でカテコラミンの量を確認します。血液中のカテコラミン濃度が正常上限の3倍以上であれば褐色細胞腫を疑い、CTなどの画像検査を行います。
画像検査で褐色細胞腫が強く疑われる場合には、医療連携を結んでいる高度医療機関などにご紹介し、¹²³I-MIBGシンチグラフィという特殊な画像検査を行うことで、その腫瘍が褐色細胞腫やパラガングリオーマであるかどうかを確認します。
褐色細胞腫の治療
褐色細胞腫・パラガングリオーマの基本的な治療は、手術による腫瘍の摘出です。手術前には、過剰なカテコラミンの作用を抑えるα遮断薬を用いて血圧や循環動態を安定させます。場合によっては、頻脈や不整脈に対する薬剤などを併用することもあります。
褐色細胞腫は多くが良性腫瘍ですが、約10%は悪性腫瘍であると報告されています。転移などにより手術での根治が難しい場合には、抗がん剤治療や放射線治療などを検討することがあります
高血圧症 Q&A
- 高血圧症と診断されました。なぜ自宅で血圧を測らないといけないのですか?
- 自宅で測定した血圧は、測定条件や環境を一定にしやすいため、医療機関で測定した血圧よりも正確だとされています。そのため、当クリニック内でも血圧測定することは可能ですが、自宅で血圧測定を行っていただくことが重要です。
- 血圧のお薬を飲み始めたら一生飲み続けなければならないのですか?
- 血圧がしっかり下がっていれば、血圧のお薬を減らしたり中止したりすることは可能です。そのため、薬物療法と並行して、減塩などの食事療法と適度な運動を行うことをお勧めいたします。
- 冬に血圧が高くなるのはなぜですか?
- 寒くなると、体は熱が外に逃げるのを防ぐために血管を収縮させて細くします。そのため、細くなった血管に血液を通すために、心臓は大きな力をかける必要があります。その結果、冬になると血圧が上昇し、春になって暖かくなると血圧は徐々に改善します。
- 健康診断の時だけ血圧が高いのですが大丈夫でしょうか?
- このような状態のことを「白衣高血圧症」といいます。これは医療機関に行くことや医師の診察などで緊張し、交感神経を刺激することで起こるとされています。白衣高血圧症は薬物治療の必要はありませんが、高血圧症に移行しやすいため注意が必要です。
- 75歳以上も家庭血圧(自宅で測定する血圧)を125/75 mmHg未満を目標に治療するようになったのはなぜですか?
- 2025年8月に改訂された高血圧管理・治療ガイドラインで、75歳以上の方も家庭血圧を従来の目標値から10 mmHg下げ、125/75 mmHg未満を目標にするように改められました。これは、近年の様々な臨床試験の結果から、厳格な血圧管理が動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の予防に非常に有効であると判断されたためです。そのため当クリニックでは、年齢を問わず家庭血圧125/75 mmHg未満を目標に治療を行なってまいります。詳しい解説については、こちらのページもぜひご覧ください。
- 完治する高血圧症があると聞いたのですが本当でしょうか?
- ほとんどの高血圧症では、生活習慣の改善などにより寛解(完治はしていないものの症状が安定した状態)することはありますが、完治することはありません。ただし、原発性アルドステロン症の一部(アルドステロン産生腺腫)や褐色細胞腫などでは、手術によって完治することがあります。そのため、高血圧症と診断された際には、血液検査でアルドステロンやカテコラミンなどのホルモンを測定することが重要です。
- 原発性アルドステロン症が疑われました。なぜ負荷試験をしなければならないのですか?
- 原発性アルドステロン症は、他の高血圧症と比較すると動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)のリスクが4〜7倍と言われています。そして、通常の血液検査だけでは原発性アルドステロン症の有無を正確に診断することができません。そのため、負荷試験という検査が必要になります。当クリニックでは一部の負荷試験を実施できますが、それでも確定診断ができない場合があります。その際には、より高度な検査が可能な大学病院などに紹介いたします。