• 2023年11月19日

ついに誕生する日本製の新型コロナワクチン「ダイチロナ」について

中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長の大庭健史です。今回は感染症コラムの第3回目として、日本製の新型コロナワクチン「ダイチロナ」についてお話させていただきます。

 

(出典:朝日新聞デジタル)

 

新型コロナワクチンのダイチロナは、日本の製薬メーカーである第一三共が開発したものです。現在主流となっているファイザー社の新型コロナワクチン「コミナティ」やモデルナ社の新型コロナワクチン「スパイクバックス」と同様のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンです。

 

ただし、ファイザー社とモデルナ社のワクチンは新型コロナウイルスのスパイク蛋白質全体を標的として作られたワクチンですが、第一三共のワクチンは新型コロナウイルスのスパイク蛋白質の受容体結合領域(RBD)を標的として作られたワクチンとのことで、多少の違いがあります。

 

このRBDを標的としたワクチンには、他に中国の研究グループが開発している「ZF0001」などもあります。この「ZF0001」と呼ばれるコロナワクチンは、2万人以上を対象とした大規模な第3相臨床試験を実施し、その有効性と安全性について、世界で最も権威ある医学雑誌の一つであるThe New England Journal of Medicineに報告されています。(https://www.nejm.jp/abstract/vol386.p2097

 

一方で、第一三共のワクチンについては大規模な臨床研究は行われていませんが、日本国内で行われた第2/3相臨床試験相当の追加免疫試験において、コロナウイルスの従来株(起源株)に対してダイチロナ接種後の中和抗体価が、ファイザー社とモデルナ社のワクチンと比較して非劣性であることが報告されています。

 

さらに、第一三共のワクチンに関しては、主な副反応として発熱、頭痛、注射部位疼痛、倦怠感などが認められましたが、そのほとんどが軽度または中等度であり、これはファイザー社とモデルナ社のワクチンと同等であると報告されています。

 

この結果に基づき、2023年8月に日本製の新型コロナワクチンが初めて製造販売承認を受けましたが、このワクチンは従来株のコロナウイルス用に開発されたものであり、実際の接種には利用されませんでした。

 

そのため、第一三共は新たにオミクロン株XBB.1.5系統に対応した新型コロナワクチンを開発し、2023年9月7日に改めて製造販売申請を行い、11月27日に開催予定の薬食審・医薬品第二部会で承認される見通しとなりました。

 

2023年11月17日には、厚生労働省がこのワクチンの製造販売申請が承認された場合、140万回分を購入することで第一三共と合意したと発表しました。このワクチンは、早ければ12月上旬から各市町村に配送され、日本製の新型コロナワクチンが初めて実際に接種可能になります。

 

ファイザー社とモデルナ社のワクチンは冷凍保存が原則必要なのに対し、第一三共のワクチンは冷蔵保存(2~8℃)が可能となっています。また、ファイザー社のワクチンは1バイアルが6人分なのに対して、第一三共のワクチンは1バイアルが2人分となっており、保存しやすく廃棄するワクチンが少なくなるのがこのワクチンの優れた点です。

 

当クリニックでも、製造販売が承認されれば第一三共のワクチンであるダイチロナを入荷し、接種を開始する予定です。

 

既存のワクチンで比較的重い副反応が出た方や、既存のワクチンを接種したにも関わらず新型コロナウイルス感染症にかかった方などは、ダイチロナの接種を検討されても良いかと思います。

 

ただし、オミクロン株XBB.1.5系統のコロナワクチンについては、安全性には問題がないものの、有効性についてはまだ十分に明らかになっていません。そのため、どの製薬会社のコロナワクチンが最も適しているかについては断定できません。当クリニックとしては、ファイザー社と第一三共の2つのワクチンを用意し、患者さんご自身でそれを選択していただき、接種いただければと考えています。

 

また、新型コロナウイルス感染症の予防においては、ワクチンの接種も重要ですが、同時に手洗いとうがいと基本的な感染症予防策も忘れてはいけません。

 

手洗いは、時間をかけて丁寧に行うことが重要です。石けんをしっかりつけ、手のひらや甲だけでなく、指先や手首も念入りに洗うことを心がけてください。また、手洗いが終わった後にアルコール手指消毒を行うと、感染予防の効果が一層高まりますのでお勧めです。

 

またうがいについては、当クリニックではうがい薬を使用せず、水うがいをお勧めしています。特に起床時や帰宅時などに各々1~2回程度行うのが良いでしょう。

 

より詳しい感染症対策について知りたい方は、当クリニックのブログ「当院における感染症対策と予防接種について」で詳しく説明していますので、ぜひご参照いただければと思います。

 

また、ワクチンを接種しても、手洗いとうがいを徹底していても、残念ながら新型コロナウイルス感染症に罹る可能性はあります。同様に、現在猛威を振るっているインフルエンザウイルス感染症にも罹る可能性もあります。もしもそれらに罹患してしまった可能性のある場合は、当クリニックの発熱外来にお気軽にご相談ください。

 

冬が近づく中、空気がより乾燥してくるため様々な感染症に注意が必要です。当クリニックでは、ワクチンによる感染予防と質の高い治療を心がけ、地域の皆さんの健康を支える一翼を担えればと考えています。

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