• 2026年1月23日
  • 2025年9月28日

マルチビタミンで死亡率が4%増加? 健康のために本当に必要ものとは

中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長、大庭健史です。当クリニックでは、生活習慣病(糖尿病など)や内分泌疾患(甲状腺疾患など)を専門に診療しています。

 

今回は、一見健康に良さそうなマルチビタミンについてお話させていただきます。当クリニックのブログを見られている方のなかには、「マルチビタミンは健康にいい」「とりあえず飲んでおけば安心」と思って、毎日サプリメントを飲んでいる方もいらっしゃるかと思います。

 

ですが、2024年に発表されたアメリカの大規模な研究では、「健康な人がマルチビタミンを毎日摂っても、寿命は延びないどころか、死亡率が4%増える傾向がある」という衝撃的な結果が報告されました。(https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2820369)

 

今回のブログでは、その研究内容と、私たちが健康を守るために本当にすべきことについて、わかりやすくお話させていただきます。

 

 

注目の研究:約39万人を対象とした長期追跡調査

この研究は、アメリカで実施された3つの大規模前向きコホート研究を統合したもので、対象は約39万人の健康な成人です。

 

がんや心臓病などの慢性疾患をもたない人々を対象に、20年以上にわたりマルチビタミンの使用と死亡率との関連が調べられました。

 

研究では、マルチビタミンを「毎日摂取している人」と「まったく摂取していない人」とに分け、食事、運動習慣、喫煙の有無などの生活習慣を調整したうえで比較が行われました。

 

その結果、「マルチビタミンを毎日摂取しても寿命は延びない」という結論に至りました。さらに注目すべき点として、研究開始から約12年間において、マルチビタミン使用者の死亡率は非使用者に比べて約4%高く、統計学的に有意であったことが報告されています。

 

この「死亡率4%増」という数字は一見わずかに思えますが、本来であれば健康意識の高い人が摂取しているはずのマルチビタミンで、逆にリスクが高まる可能性が示された点は看過できない結果といえるでしょう。

 

なぜ「体に良さそうなサプリ」でリスクが上がる可能性があるのか?

では、なぜマルチビタミンを摂取しているにもかかわらず、死亡率が上昇する可能性があるのでしょうか。

 

理由の一つは、必要のない栄養素を余分に摂取してしまうことによる害です。ビタミンやミネラルは、足りなければ問題ですが、過剰に摂りすぎても体に悪影響を及ぼすことがあります。

 

特に、脂溶性ビタミン(A・D・E・Kなど)は体内に蓄積しやすく、過剰症を引き起こすこともあります。

 

また、マルチビタミンを飲んでいることで「これで健康は大丈夫」と思い込み、食事や運動などの生活習慣が疎かになってしまう場合もあります。こうした“健康の錯覚”が逆にリスクを高める可能性も否定できません。

 

マルチビタミンに「費用対効果」はあるのか?

健康のためにと思って続けているサプリメントですが、その費用対効果についても見直す必要があります。

 

市販のマルチビタミンは、製品によって価格が異なりますが、月に1,000円程度のものを毎日飲み続けると、年間で約12,000円、10年で12万円、20年ではなんと24万円にもなります。

 

これだけのコストをかけて続ける価値があるのかというと、今回の研究結果から考えれば、「寿命は延びない」「むしろ死亡率が上がる可能性がある」 という点で、大きな疑問が残ります。

 

健康のためにお金を使うのであれば、その分をより良質な食材に充てた方が、はるかに合理的かもしれません。

 

ビタミン製剤が本当に必要な人とは

ここまでマルチビタミンについて否定的な側面を述べてきましたが、だからといってビタミン製剤がまったく不要というわけではありません。

 

たとえば、胃の手術後や特定の消化器疾患によって栄養の吸収が十分に行われない人、妊娠中や授乳中の人、高齢で食事量が限られている人など、一部の状況ではビタミン製剤が必要になります。

 

こうした場合には、医師と相談のうえで、必要な成分を適切な量だけ補うこと が大切です。ただし、健康な一般成人が「なんとなく」「とりあえず」でマルチビタミンを摂取する必要性は、現時点では医学的に認められていません。

 

栄養不足が心配なら、まずは食生活を見直そう

「栄養が足りていないかも」「野菜をあまり食べられていない」と感じたとき、まず思い浮かぶのがサプリメントかもしれません。確かに手軽ですが、本当に大切なのは、まず自分の食生活を見直すことです。

 

ビタミンといえば果物をイメージされる方も多いと思います。しかし果物には果糖(フルクトース)が多く含まれており、特に糖尿病の方では過剰摂取によって血糖上昇を招くなどの弊害もあります。

 

そのため果物は 1日約80kcal程度 に抑えつつ、うまくビタミンを取り入れるのが理想的です。詳しくは、当クリニックの管理栄養士ブログ「血糖値が上昇しやすい果物を上手に食べるには!管理栄養士が分かりやすく解説」をぜひご覧ください。

 

また、野菜、魚や豆、全粒穀物、良質な脂質や乳製品などをできるだけ多様に取り入れることが、ビタミンやミネラルを自然な形で補う一番効果的な方法です。

 

 

サプリメントで栄養素を単体で摂るのではなく、食事の中で全体としてのバランスを取ることが、結果的に健康への近道になります。

 

まとめ

今回ご紹介した研究では、健康な人がマルチビタミンを毎日摂取しても寿命が延びるどころか、むしろ死亡率が約4%高まる可能性があることが示されました。これは「とりあえず飲んでおこう」とサプリメントを続けている方にとって、見逃せない事実です。

 

栄養不足を心配する気持ちはよく分かりますが、サプリメントだけで安易に補うのではなく、まずは食事の質を見直すことが大切です。サプリメントはあくまで「補助」であり、「主役」ではありません

 

ヒトの健康を本当に支えるのは、バランスの取れた毎日の食事です。そしてその選択は、今日からでも始めることができます。

 

自分の食生活や栄養バランスが気になると感じる方は、どうぞお気軽に当クリニックへご相談ください。血液検査や管理栄養士によるアドバイスを通じて、無理のない形で健康づくりをサポートいたします。

 

 (文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

 

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