- 2026年2月17日
- 2026年1月20日
2型糖尿病と筋肉の深い関係~「サルコペニア」を防ぐ運動と食事の工夫〜
中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の管理栄養士、武居ひろ子です。
私は非常勤として当クリニックで勤務しており、隔週(主に第2・第4)月曜日の14時30分から18時まで、患者さんに向けた栄養指導を行っています。2026年も引き続き、中野区やその周辺のお住まいの皆さんの健康を守るお手伝いができればと思っております。
最近、ペットボトルのフタが開けづらい、階段を上るのがしんどく手すりにつかまらないと登れない、脚が以前より細くなってきたと感じることはありませんか。こうした変化は、加齢や病気などにより全身の筋肉が減っているサインかもしれません。

加齢や運動不足に伴って筋肉量や筋力が低下する状態を「サルコペニア」といいます。筋肉量が減ると、筋力が低下して体を動かしづらくなり、転倒の原因になるだけでなく、さまざまな身体への影響が生じます。
たとえば、熱の産生が減ることで冷えやすくなる、体内の水分調節が難しくなり熱中症や脱水を起こしやすくなる、さらに骨密度が低下しやすくなり骨粗しょう症のリスクが高まるなどが挙げられます。
また、筋肉は血糖コントロールとも密接に関係しているため、2型糖尿病のある方は特に注意が必要です。
筋肉は血糖の「貯蔵庫」の役割を担っており、食事によって血液中に増えた血糖は筋肉に取り込まれることで血糖値が下がります。
さらに、必要なときには血糖を放出する働きもあります。そのため、筋肉量が減ると血糖を調整する力が弱まり、血糖値が上がりやすくなってしまいます。
たとえば、高齢になって外出がおっくうになったり、冬場に家の中で過ごす時間が増えて活動量が減ったりすると、食欲が低下する方がいらっしゃいます。
食事量が減ることで筋肉量も減少し、結果として血糖が上昇しやすくなるという悪循環に陥ってしまうのです。
筋肉維持のために動きましょう
筋肉量は20歳代前半から中盤でピークに達し、その後は加齢とともに徐々に減少していきます。
特に大腿四頭筋などの下肢筋肉の断面積は、20歳から80歳の間に最大で約27~40%減少すると報告されています。また、筋肉量の減少に伴い、脂肪量はおおむね75歳頃まで増加する傾向がみられます。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11477465)

運動習慣のない方では、筋肉の減少がさらに早く進みやすくなります。筋肉が減ることで歩行速度が遅くなり、動作が緩慢になるほか、疲れやすさも感じやすくなります。
特に近年の夏のように暑い時期には外出を控える方が多く、「以前より筋肉が落ちた気がする」とお話しされる方も少なくありません。
寒さなどで外出が難しく、運動の機会が減っている場合は、自宅や職場でできる工夫を取り入れてみましょう。
ラジオ体操やストレッチ、仕事の休憩時間に椅子から立ったり座ったりを繰り返すこと、また家事を少し汗ばむ程度まで意識して行うことも立派な運動になります。無理のない強度や量に調整し、できることから取り組んでみましょう。

筋肉を増やすための食事について
では、筋肉を保つ、あるいは増やすためには、どのような食事が望ましいのでしょうか。
ポイントは、①適量のエネルギーを摂ること、②バランスのとれた食事、③十分なたんぱく質を1日3食に均等に摂ることです。

筋肉を増やそうとして、肉や魚などたんぱく質を多く含む食品だけをたくさん食べればよい、というわけではありません。
筋肉の合成には、適量の炭水化物(糖質)によるエネルギー補給と、ビタミン類(特にビタミンB群やビタミンDなど)も欠かせません。これらがそろって初めて、効率よく筋肉が作られます。
糖尿病の食事療法の基本は、毎食ごとに「主食(糖質)・主菜(たんぱく質)・副菜」をそろえることです。
この食事パターンは、血糖コントロールだけでなく、筋肉の維持・低下予防にもつながる、理想的な食事内容といえます。
たんぱく質は、肉・魚・大豆製品・卵・乳製品などに豊富に含まれています。これらの食品は夕食にまとめて摂りがちですが、筋肉維持のためには朝・昼・夕の3食に分けて摂取することが大切です。
1食あたりの目安量としては、普段は座って過ごす時間が多いものの、家事や通勤、買い物、軽い運動などの活動がある方であれば、肉や魚は「片手のひらにのる程度」、スーパーで売られている魚であれば「1切れ程度」が一つの目安になります。
ただし、腎機能の低下を指摘されている方では、たんぱく質の摂取量に調整が必要な場合があります。糖尿病があり、腎臓の数値に不安のある方は、自己判断でたんぱく質を増やさないことが大切です。
まとめ
筋肉を保ち、増やすためには、たんぱく質だけでなく、十分なエネルギー摂取と栄養バランスを意識した食事が重要です。
特に糖尿病のある方では、血糖コントロールと筋肉維持を両立させることが大切であり、年齢や日常の活動量、腎機能の状態などによって適切な食事内容は一人ひとり異なります。
「どれくらい食べたらよいのかわからない」「自分の体の状態に合った食事を知りたい」と感じた方は、ぜひ当クリニックの栄養指導をご活用ください。
管理栄養士が、お一人ひとりの生活背景や体調に合わせて、無理なく続けられる食事の工夫をご提案いたします。筋肉と健康を守る第一歩として、お気軽にご相談ください。
なお、日程が合わず栄養相談を受けられない場合は、当クリニック院長のブログ「糖尿病の食事療法と当クリニックの栄養指導について」も参考にしていただければ幸いです。
引用文献:健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023 (令和6年1月 健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂 に関する検討会)
