• 2024年2月7日

花粉症治療は早く始めるのが良いの?ベストな薬剤についても解説

2月になり、いよいよスギ花粉症のシーズンが始まりました。当クリニックでも、花粉症の症状で受診される方が少しずつ増えています。

そのため、今回は花粉症の治療について、いつ治療を開始すれば良いのか、またどの薬剤を使用するのが適切なのかなどについて解説させていただきます。

 

 

花粉症とは

花粉症はアレルギー性鼻炎の一種で、その中で季節性アレルギー性鼻炎に分類され、スギなどの花粉によりくしゃみや鼻水などのアレルギー症状が引き起こされる疾患です。

 

2020年に日本耳鼻咽喉科学会会報で発表された鼻アレルギーの全国疫学調査2019によれば、2008年と比較してスギ花粉症の患者数が増加し、約38.8%の方がスギ花粉症であると報告されました。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/123/6/123_485/_article/-char/ja)

 

花粉症の原因については、これまでに50種類以上の花粉が報告されていますが、その多くは農家がビニールハウス内で受粉作業などを行うことで発症する特殊なケースです。

 

一般的にはスギが最も多く、他にもヒノキやシラカバなどの樹木の花粉があります。草の花粉もまた原因となり、ブタクサ、カモガヤ、ヨモギ、カナムグラ、オオアワガエリなどが挙げられます。

 

なぜ花粉症になるのか?

ヒトの体は、ウイルスや細菌などの有害な物質が侵入すると、免疫系が作用してこれらを攻撃し排除します。一方で、花粉は通常ヒトにとって有害ではないため、免疫系が強く反応することはありません。

 

しかしながら、何らかの免疫系の異常により花粉に対するIgE抗体が過剰に生成されると、花粉症を発症してしまいます。

 

この花粉に対するIgE抗体は、肥満細胞を刺激してヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質を分泌させ、これが血管や神経などを刺激してくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こします。

 

花粉症の治療

花粉症治療の基本は、原因となる花粉の回避と除去、症状を改善させるための薬物治療、花粉症を根本から治療する長期的な薬物治療(舌下免疫療法)です。

 

「原因となる花粉の回避と除去」については、ニュースやインターネットなどの情報から花粉の飛散状況を把握し、花粉が多い時はなるべく外出を控え、やむなく外出する際はマスクやメガネを着用するよう心がけましょう。

 

そして、服や体に付着した花粉を払ってから自宅に入り、入室後は手洗いうがいと洗顔をするようにしましょう。また、定期的に家を掃除してできるだけ花粉を除去するよう心がけましょう。

 

「症状を改善させるための薬物治療」については、花粉が飛散し始めるか、あるいは症状が出始める時から治療薬を開始すると、シーズンを通して花粉症の症状が軽減されることが知られています。そのため、症状が少しでもあれば、できる限り早めにクリニックにご相談ください。

 

治療薬については、抗ヒスタミン薬による内服治療が基本となります。抗ヒスタミン薬は、文字通り肥満細胞から分泌されるヒスタミンの作用を抑える薬剤です。この薬剤は、第1世代(ポララミンやレスタミンなど)と第2世代(アレグラやビラノアなど)に分類されます。

 

最初に開発された第1世代の薬剤は、第2世代と比較して速効性があって鼻水やくしゃみにより強い効果を発揮しますが、効果の持続時間が短く、強い眠気や高齢者の認知機能を低下させるなどの副作用があります。また、口渇や尿閉などの副作用もあり、閉塞隅角緑内障や重症筋無力症などがある方には投与できません。

 

そのため、これらの問題を解決するため第2世代の抗ヒスタミン薬が開発され、現在では第2世代が主流になっています。この第2世代の抗ヒスタミン薬で、現在国内で処方できるものは以下に示す11種類です。

 

(出典:薬の通販オンライン)

 

これらの薬剤は、化学構造の違いにより効果や副作用(眠気など)に差があります。

 

当クリニックのおすすめは、市販されている薬剤であれば、眠気が出にくいアレグラ(フェキソフェナジン)、眠気と効果のバランスが良いザイザル(レボセチリジン)、効果の強いアレロック(オロパタジン)などです。

 

また、クリニックで処方する場合は、効果が強くて眠気も出にくいビラノア(ビラスチン)をおすすめします。ただし、患者さんによってはビラノアと相性の悪い方も稀にいます。

 

その場合は、ビラノアが属するピペラジン/ピペリジン骨格を有する抗ヒスタミン薬ではなく、三環形構造を有するアレジオン(エピナスチン)またはアレロック(オロパタジン)にすると良い場合があります。

 

花粉症の初期治療および軽症の場合は、これらの抗ヒスタミン薬だけで十分ですが、中等症以上の場合はこれだけでは不十分です。中等症以上の場合は、ステロイド薬の点鼻薬(ナゾネックスやアラミストなど)を追加し、それでも改善が不十分な場合はロイコトリエン拮抗薬や内服のステロイドなどを追加します。

 

また、目のかゆみなどの症状については、内服の抗ヒスタミン薬が効きづらいため点眼薬を追加します。花粉症の重症度と症状に応じた治療については、以下の図を参考にしてください。

 

(出典:日経メディカル)

最後の「花粉症を根本から治療する長期的な薬物治療」とは、舌下免疫療法(減感作療法)に該当します。これは、花粉症の時期ではない時から始める治療法です。

 

舌の下にスギ花粉のエキスを投与し、アレルギー反応を根本から改善させる治療です。治療期間は長く、少なくとも3年以上続ける必要がありますが、安全性が高く、有効性も高い(約80%)治療法です。

 

ただし、2024年1月現在、治療薬であるシダキュアの供給不足により新規の治療が行えないため、当クリニックでは以前からシダキュアを服用している方のみ治療を行っています。

 

最後に

当クリニックでは、糖尿病などの生活習慣病だけでなく、花粉症などのアレルギー疾患の治療にも力を入れております。アレルギー疾患の取り組みなどについては、当クリニックホームページの「アレルギー・花粉症」のページをご覧ください。

 

また、今回ご紹介した花粉症を含むアレルギー疾患にお悩みの方は、お気軽に当クリニックにご相談ください。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

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