• 2024年8月13日
  • 2024年8月6日

2型糖尿病ではない方にはおすすめできないリベルサスによるダイエットについて

東京都中野区のJR中野駅南口からすぐのところでクリニックを開業している糖尿病専門医の大庭健史です。

 

昔から様々なダイエット方法が流行しては廃れてきましたが、最近は自由診療での「GLP-1ダイエット」が大流行しています。

 

以前、当クリニックのブログ「GLP-1受容体作動薬はダイエットために使用して良いのか?」でもお話させていただきましたが、日本糖尿病学会から「GLP-1 受容体作動薬および GIP/GLP-1 受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」が発表され、ダイエットや美容などを目的とした適応外使用は慎むよう勧告されています。

 

現在GLP-1受容体作動薬のウゴービは、その使用が限定されているものの、肥満症治療薬として日本でも使用されています。

 

また、アメリカではGIP/GLP-1受容体作動薬(ゼップバウンド)もBMI30以上の肥満の方や、BMI27以上で生活習慣病(高血圧症や脂質異常症など)を有する方に治療薬として使用されています。

 

そのため、肥満および肥満症でお悩みの方がGLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬をダイエット目的で使用したいという気持ちは理解できます。

 

特にリベルサスは、GLP-1受容体作動薬で唯一の内服薬であることもあり、お気軽に使えるダイエット薬として人気があります。

 

しかし、当クリニックではダイエット目的でのGLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の使用を推奨していません。特にリベルサスによるダイエットはおすすめできません。

 

そこで今回は、2型糖尿病治療薬であるリベルサスについてわかりやすく解説し、なぜリベルサスによるダイエットがおすすめできないのかを詳しく説明させていただきます。

 

(出典:ノボ ノルディスク ファーマ ホームページ) 

 

リベルサスについて

リベルサスなどのGLP-1受容体作動薬は、体内で生成されるGLP-1とは異なり分解されにくいため、GLP-1受容体をより長く刺激することで食欲抑制効果や血糖降下作用を発揮します。

 

ただし、GLP-1受容体作動薬は消化管での吸収が難しく、また消化酵素によって速やかに分解されるため、経口のGLP-1受容体作動薬の開発は困難とされてきました。

 

しかし、サルカプロザートナトリウム(SNAC)という経口吸収促進剤の開発により、注射薬であるセマグルチドとSNACを配合したリベルサスという内服の薬剤が開発されました。

 

このリベルサスは、BMI32前後の肥満を伴う2型糖尿病患者を対象としたPIONEER試験という大規模臨床研究が行われ、プラセボ(偽薬)と比較してHbA1cはリベルサス3mgで0.6%、7mgで0.9%、14mgで1.1%の改善が認められました。

 

また、体重についてはプラセボと比較してリベルサス3mgでは改善しないものの、7mgで0.9kg、14mgで2.3kgの改善が認められました。(https://diabetesjournals.org/care/article/42/9/1724/36289/PIONEER-1-Randomized-Clinical-Trial-of-the)

 

日本人におけるリベルサスの効果について

日本人は海外の人と比較すると肥満の方が少ないため、海外のGLP-1受容体作動薬に関する論文のみでこの薬剤を評価することはできません。

 

そのため、横浜市立大学の研究グループが2023年に日本人のみを対象としたGLP-1受容体作動薬に関する論文を発表しました。

 

その論文によると、プラセボ(偽薬)と比較して、HbA1cはリベルサス3mgで0.79%、7mgで1.24%、14mgで1.60%の改善が認められました。

 

(出典:横浜市立大学ホームページ)

 

また、体重についてはプラセボ(偽薬)と比較してリベルサス3 mgでは改善しないものの、7 mgで1.08 kg、14 mgで2.62 kgの改善を認めました。

 

(出典:横浜市立大学ホームページ)

 

リベルサスによるダイエットがおすすめできない理由について

上記で紹介した2つの大規模臨床研究を比較すると、リベルサスのHbA1c改善効果は海外でも良好ですが、日本人ではより強い効果を発揮している可能性があります。

 

そのため、リベルサスは日本人にとっても海外の方にとっても優れた経口血糖降下薬であることは間違いありません。

 

一方で、体重減少効果についてはあまり強くないと考えられます。特に、他のGLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬(ウゴービやマンジャロなど)と比較すると効果が大幅に劣っています。

 

また、リベルサスなどのGLP-1受容体作動薬は、吐き気・嘔吐、下痢、便秘などの胃腸症状が多く見られます。さらに、大規模な臨床研究で胆嚢炎や胆管炎などのリスクが高まることが報告されています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8961394)

 

以上のことから、メリットが少なくデメリットが少なくないダイエット目的でのリベルサスの使用は控えることをお勧めします。

ただし、肥満を合併した2型糖尿病患者さんには、優れた血糖降下作用があるため、その使用は問題ないと考えます。

 

最後に

肥満は様々な疾患のリスクになるため、治療が必要です。しかし、保険適用外の薬剤を使用して体重を減らすことは、安全性や倫理的な観点からあまりおすすめできません。

 

特に肥満症については、一旦減量に成功してもリバウンドしやすいため、専門の医療機関で長期的に治療を受けることをおすすめします。

 

当クリニックには、肥満症の治療を専門とする医師や管理栄養士が在籍しています。体重がなかなか減らないなどでお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

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