- 2026年2月28日
- 2026年1月3日
インスリンを使用していない方にはおすすめできないフリースタイルリブレ2
東京都中野区、JR中野駅南口すぐの場所でクリニックを開業しております、糖尿病専門医の大庭健史です。
近年、持続血糖測定器(CGM)が広く知られるようになり、その中でもフリースタイルリブレ2は、「指先に針を刺さずに血糖の推移が分かる」という利便性から大きな注目を集めています。

(出典:アボットジャパン社 ホームページ)
血糖値をスマートフォンで手軽に確認できる点に魅力を感じ、インスリンを使用していない糖尿病の方や、いわゆる糖尿病予備軍の方からも「使ってみたい」というご相談を受ける機会が増えてきました。
しかし結論から言うと、インスリンを使用していない方にフリースタイルリブレ2を使用することはお勧めしません。本ブログでは、なぜお勧めできないのかについて、糖尿病専門医の立場から詳しく解説いたします。
保険適用と費用の問題
日本の公的医療保険制度において、フリースタイルリブレ2が保険適用となるのは、インスリン自己注射を行っている糖尿病患者さん、または妊娠糖尿病の患者さんに限られます。
糖尿病の病型については、1型・2型の別は問われませんが、共通する条件は「インスリン治療を行っていること」です。
そのため、食事療法や経口血糖降下薬のみで治療を行っている方は保険適用外となり、使用する場合は自費診療となります。
自費で継続使用する場合、センサー代や管理料などを含めると、月あたり1万円を超える負担になることも珍しくありません。
このような費用を自己負担してまで継続的に使用する意義があるのかどうかについては、効果や必要性を踏まえ、慎重に検討する必要があります。

精度評価の指標「MARD」とは
フリースタイルリブレ2をはじめとする持続血糖測定器(CGM)の精度を評価する際に用いられる代表的な指標が、MARD(Mean Absolute Relative Difference)です。
MARDとは、実際の血糖値(静脈血糖値や自己血糖測定の値)とCGMによる測定値との差を、平均的な百分率として示した指標であり、この数値が小さいほど測定精度が高いことを意味します。
フリースタイルリブレ2の精度については、Alvaらによる性能評価試験などで報告されています。成人糖尿病患者さんを対象とした解析では、MARDは約9.2%とされており、旧来のフリースタイルリブレにおけるMARD(約11.4%)と比較すると、精度は改善していることが分かります。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8875061)
一方で、この数値はあくまで平均的な誤差を示すものであり、自己血糖測定と完全に一致するわけではありません。したがって、フリースタイルリブレ2は一定の誤差が生じ得ることを前提に、その特性を理解したうえで使用すべき測定機器であると言えます。
数値は比較的正確でも「ズレ」は避けられない
MARDが9.2%であるということは、実測血糖値が75 mg/dLであった場合、平均して±7 mg/dL程度のズレが生じうることを意味します。
糖尿病ではない方が使用すると、もともと空腹時血糖値が高くないため、実際には低血糖ではないにもかかわらず、センサー上では70 mg/dL未満の「低血糖」と表示されてしまう場面が少なくありません。
さらに重要なのは、血糖値が急激に変動している状況では、この誤差がより大きくなる可能性がある点です。
フリースタイルリブレ2を含むCGMは、血管内の血糖値ではなく、皮下の間質液中のグルコース濃度を測定しているため、実際の血糖変動に対して時間的な遅れ(タイムラグ)が生じます。
食後や運動後、あるいは低血糖に向かう途中といった場面では、血糖値の変化に十分追従できず、表示値が実測値より遅れて反映されることがあります。
このタイムラグは一般に約5〜15分程度とされており、血糖変動が急であるほど、そのズレが大きくなることが報告されています。
インスリン治療中の方にとっては、こうした特性を理解したうえで「血糖の方向性」や「変動パターン」を把握することに大きな意義があります。
一方で、インスリンを使用していない方では、このようなズレを含む情報が直接的な治療変更や予後改善につながる場面は多くありません。
そのため、表示される数値を過度に重視すること自体が、かえって不安や誤解を招く可能性があります。
非インスリン使用者では得られるメリットが限定的
インスリンを使用していない糖尿病の治療では、HbA1c、空腹時血糖、食後血糖といった指標をもとに、比較的中長期的な視点で治療方針を決定します。
日々の細かな血糖変動をリアルタイムで把握できたとしても、薬剤調整や治療介入が必要となるケースは限られています。
むしろ問題となるのは、CGMの数値を「絶対的に正しい血糖値」と受け取ってしまうことです。わずかな数値の上下に一喜一憂し、不安が増してしまう方も少なくありません。これは、MARDという誤差の存在が十分に理解されていないことが一因です。
例外として考えられる教育目的での短期使用
フリースタイルリブレ2の使用については賛否が分かれるところですが、例外的に、食事内容や運動と血糖変動の関係を理解するという教育的な目的に限っては、短期間使用する意義がある場合もあります。
ただし、その場合であっても、フリースタイルリブレ2の精度には限界があり、MARDが示す誤差やタイムラグの存在を十分に理解したうえで、自費負担についても納得して使用することが前提となります。
一方で、インスリンを使用していない方が明確な治療目標もないまま漫然と長期間使用することは、費用対効果の観点から見てもお勧めできません。
院長個人の考えとしては、インスリン非使用の方に対してフリースタイルリブレ2を積極的に勧めることはなく、あくまで限定的・例外的な使用にとどめるべきであると考えています。
まとめ:誰にとって最適なデバイスか
フリースタイルリブレ2は、インスリン治療を行っている方にとってこそ、その真価を発揮する医療機器です。
一方、インスリンを使用していない方では、保険適用外となり費用負担が大きいにもかかわらず、MARDが示すように測定精度には一定の限界があり、治療方針を大きく左右するほど有用な情報が得られる場面は多くありません。
なお、同様の理由から、他のリアルタイムCGMであるデクスコムG7についても、インスリンを使用していない方に対しては、原則としてその使用を推奨していません。

(出典:デクスコム社 ホームページ)
デクスコムG7の精度については、Shahらによる性能評価試験で報告されており、成人糖尿病患者さんを対象とした解析では、MARDは約8.2%とされています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35157505)
デクスコムG7は、フリースタイルリブレ2と同等、あるいはわずかに高い精度を有するCGMですが、非インスリン使用者においては、保険適用外である点や、得られる詳細な血糖データが治療変更に直結しにくいという点で、本質的にはフリースタイルリブレ2と共通しています。
フリースタイルリブレ2を含むCGMは万能なデバイスではなく、適した使い方と対象があります。使用を検討する際には、利便性やメリットだけでなく、その限界についても十分に理解することが重要です。
フリースタイルリブレの使用に迷ったら
フリースタイルリブレ2がご自身に本当に必要かどうかは、現在の治療内容や生活背景によって大きく異なります。自己判断で導入する前に、ぜひ一度、当クリニックへご相談ください。
当クリニックでは、糖尿病診療に関する情報や治療方針について、ホームページでも詳しくご紹介しています。
フリースタイルリブレ2を含めた血糖管理についても、患者さん一人ひとりにとって最適な方法を、診察の場で丁寧にご提案いたします。ご不明な点があればお気軽にご相談ください。
(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)
