• 2024年1月31日
  • 2024年1月29日

甲状腺の風邪とも言われる亜急性甲状腺炎について分かりやすく解説

中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長の大庭健史です。

当クリニックのブログは糖尿病などの生活習慣病に関するテーマが多くなっていますが、私は大学病院勤務時代に甲状腺専門外来をしていたこともあり、生活習慣病だけでなく甲状腺疾患も専門としています。今回は久しぶりに甲状腺に関するテーマでお話ししたいと思います。

 

橋本病やバセドウ病などの一般的な甲状腺疾患については、当クリニックのホームページ「甲状腺・内分泌」や、甲状腺を専門とする他の病院やクリニックのホームページでも詳しく解説されています。

 

しかしながら、甲状腺疾患の中であまり知られていないが実は意外と多い「亜急性甲状腺炎」については、患者さん向けの分かりやすい解説が少ないと感じます。

そこで今回は、「甲状腺の風邪」とも言われる亜急性甲状腺炎について、詳しくお話しいたします。

 

 

亜急性甲状腺炎とは

甲状腺ホルモンが過剰になる疾患(甲状腺機能亢進症)といえばバセドウ病ですが、亜急性甲状腺炎もバセドウ病より程度は軽いですが、甲状腺ホルモンが一過性に増加することで動悸、イライラ感、多汗などの症状が現れます。

それに加え、首の下側(甲状腺のある部分)に比較的強い痛みが現れるのが特徴です。また、発熱、倦怠感、筋肉痛、肝機能障害などを伴うこともあります。

 

首の下側に痛みが出る原因としては、亜急性甲状腺炎という疾患が甲状腺に強い炎症を引き起こすことが挙げられます。この炎症については、約半数の方が風邪に引き続いて起こることからウイルスが関与していると考えられていますが、自己免疫や遺伝的な要素も関与しており、はっきりとした原因はまだ解明されていません。

 

また、亜急性甲状腺炎の患者さんの約50~80%が、日本では10%弱しかない白血球の型であるHLA-B 35を持っていることが分かっています。そして亜急性甲状腺炎の再発は約20~30%と比較的多く、再発の要因としてHLA-B 35に加えてHLA-B 18:01という白血球の型を有する人に多いと報告されています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6429176)

 

また、亜急性甲状腺炎は夏または冬に発症しやすく、発症好発年齢は30~59歳で、男女比は1:3~7で女性に多いとされています。

 

亜急性甲状腺炎の診断について

亜急性甲状腺炎の患者さんの多くは、頚部痛を主訴にして来院されます。当クリニックでは、まず問診を行い、その後触診で甲状腺の部位に一致した痛みの有無を確認します。

 

この痛みが亜急性甲状腺炎を疑わせる場合、甲状腺エコー検査を実施します。甲状腺エコー検査によって、痛みのある部位に一致した低エコー域(黒く見える部分)が確認できれば、亜急性甲状腺炎と診断し、治療を開始します。

 

また、血液検査により白血球数増加やCRPの上昇など、炎症反応があることを確認し、同時に甲状腺ホルモンの数値も検査します。甲状腺ホルモンの数値(FT3とFT4)は、亜急性甲状腺炎により甲状腺が一部破壊されることで一度上昇しますが、その後徐々に低下して正常に戻ります。

 

しかし、甲状腺の一部が破壊される影響で、一時的に甲状腺ホルモンが低下するケースもあります。また、一部の患者さんでは永続的な甲状腺機能低下症に進展し、薬物治療(チラーヂン)が必要となる場合もあります。

 

亜急性甲状腺炎の治療について

症状が軽度の場合、ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬で改善することもありますが、一般には炎症が強いためステロイド(副腎皮質ホルモン剤)が使用されます。

 

当クリニックでは、プレドニン(プレドニゾロン)を10~15 mg/日から治療を開始することが一般的です。プレドニンは即効性がないものの、数日経つと頚部痛が改善し、あたかも完治したかのような感触が得られます。

 

しかしながら、ここで治療を自己中断してしまうと、すぐに症状(頚部痛)が再発してしまいます。

そのため、亜急性甲状腺炎の方は医師の指示があるまでプレドニンの内服を継続してください。

 

プレドニンの投与期間については、徐々に投与量を減らしながら約6~10週間続けます。プレドニンの内服が終了し、その後も甲状腺ホルモンや炎症反応などに異常がみられなければ、治療終了となります。

 

亜急性甲状腺炎の予後について

神戸市にある隈病院の報告によれば、亜急性甲状腺炎に罹患した患者さんの約53.6%が甲状腺機能低下症に進展するとされています。

 

また、約5.9%の患者さんが永続性の甲状腺機能低下症になると報告されていますが、プレドニンで治療された場合は永続性の甲状腺機能低下症になりにくいとされています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19337012)

 

このため、当クリニックではプレドニンで治療を行い、治療終了後もしばらくは定期的な血液検査を行います。また、患者さんの中には10年以上経過してから再発したり、稀にバセドウ病に移行したりするため、外来通院が終了してからも注意が必要です。

 

最後に

当院クリニックには、甲状腺疾患をはじめとした内分泌疾患の専門医(内分泌代謝科専門医)が複数在籍しています。また甲状腺エコー検査は、甲状腺疾患の診療経験が豊富な院長が担当しております。

 

今回ご紹介した亜急性甲状腺炎やその他の甲状腺疾患でお悩みの方は、お気軽に当クリニックにご相談ください。

 

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