• 2024年4月10日

紅麹の成分を含むサプリメント摂取で多くみられるファンコニー症候群とは!

中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長の大庭健史です。

東京の中野駅前で生活習慣病や内分泌疾患などを中心に、内科全般の診療を行っています。

 

最近、小林製薬の紅麹を含むいわゆる健康食品による腎障害の恐れについてお問い合わせをいただいており、当クリニックでも関連する検査を行っています。

 

2024年4月1日、日本腎臓学会から「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究のアンケート調査(中間報告)」が発表されました。

 

この報告では、47例の分析ではありますが、紅麹コレステヘルプによるファンコニー症候群(Fanconi症候群)の疑いが多くみられたと報告されています。

 

ファンコニー症候群は比較的まれな疾患です。そのため、一般の方々はこの疾患についてご存じない方も多いかと思います。今回のブログでは、ファンコニー症候群について解説し、また、小林製薬の紅麹を含む健康食品を摂取される方々への注意点についてもお話しします。

 

 

ファンコニー症候群とは

ファンコニー症候群は、主に腎臓の近位尿細管が障害されることによって引き起こされます。近位尿細管は、原尿(腎臓の糸球体で濾過された血液から生じる尿のもと)から水分、ミネラル、糖(グルコース)などを再吸収する役割を果たしています。

 

これが何らかの理由で障害されると、電解質異常(低カリウム血症や低リン血症など)、代謝性アシドーシス、脱水症などが生じます。

 

特に、電解質異常が重症であれば痙攣、進行性脳症、致死的な不整脈(心室細動)などのリスクがあります。そのため、ファンコニー症候群に早期の発見することと適切に治療をすることがとても重要です。

 

ファンコニー症候群の原因について

ファンコニー症候群の原因は大きく分けて2つに分類されます。1つは先天性のもので、日本ではDent病やミトコンドリア脳筋症などが多いとされています。もう1つは後天性のもので、こちらの方が一般的です。

 

後天性ファンコニー症候群の原因は、シェーグレン症候群や悪性腫瘍などの疾患によるものや、抗腫瘍薬や抗けいれん薬などの薬剤によるものが報告されています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6727890)

 

私が以前治療に携わった患者さんは、抗腫瘍薬によるファンコニー症候群でした。次の項目でこの経験について詳しくお話しします。

 

抗腫瘍薬によるファンコニー症候群

私が消化器内科の研修時代、大腸がんの抗がん剤治療を受ける方を担当しました。

 

指導医の指示のもと、抗がん剤の投与と経過観察を行うことになりました。患者さんは体調面に問題ないものの、抗がん剤投与後の血液検査で電解質(カリウムやリンなど) の低下がみられました。

 

私達は、これを抗がん剤の副作用と考え、点滴による電解質補充を行い、経過を観察しました。しかし、翌々日の血液検査では電解質異常が更に悪化していました。食事を適切に摂取し、点滴による電解質補充を行っても改善が見られなかったため、「抗腫瘍薬によるファンコニー症候群」と診断しました。

 

その後も電解質異常は進行し、重度の低リン血症による意識障害が疑われたため、電解質を大量に投与するために中心静脈カテーテルを留置し、カリウム製剤とリン製剤を大量に補充しました。

 

その患者さんは、幸運にも抗がん剤投与から約2か月後に回復して退院することができましたが、ファンコニー症候群という疾患の診断と治療には多くの困難が伴いました。

 

当クリニックでのファンコニー症候群のスクリーニングについて

「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究のアンケート調査(中間報告)」によると、腎機能の低下と尿蛋白増加に加え、低カリウム血症(血中濃度が3.5 mEq/L未満)が約65%、低リン血症(血中濃度が2.5 mg/dL未満)が約60%、低尿酸血症(血中濃度が2.0 mg/dL未満)が約60%、尿糖が3+以上が約87%と報告されています。

 

そのため、小林製薬の紅麹を含むいわゆる健康食品を摂取された方が検査をご希望された場合、当クリニックでは血液検査と尿検査を行い、上記のような検査結果にならないかを確認します。

 

もしも著しい腎機能低下やファンコニー症候群を疑うような電解質異常が見られる場合は、ただちに入院も可能な大規模な病院の腎臓内科にご紹介させていただきます。

 

最後に

小林製薬の紅麹を含むいわゆる健康食品を摂取されていた方の多くは、高コレステロール血症を改善したいという思いから内服されていたと思います。

 

高コレステロール血症に関しては、まずは当クリニックのブログ「脂質異常症(高LDLコレステロール血症)における食事療法について」を参考に食事を見直すのが大切です。

 

当クリニックでは、外来で生活習慣病を専門とする医師が脂質異常症に対する食事療法について分かりやすくご説明いたします。また、隔週(第2と第4)の月曜日14時30分から17時30分まで、管理栄養士による栄養指導を行っておりますので、こちらもぜひご利用ください。

 

食事療法を適切に行っても改善しない場合は、やはりエビデンス(科学的根拠)のある治療薬であるスタチンを用いてしっかりと治療していくことが大切です。

 

ただし、スタチンには稀ではありますが、重篤な副作用である横紋筋融解症などがあるため、医師の管理下での定期的な血液検査は不可欠です。

 

なお、高コレステロール血症の治療目標については、動脈硬化性疾患予防ガイドラインに沿って治療を進めていきます。以下の図を参考に、治療を受けていただければと思います。

 

 

高コレステロール血症を改善したい、またはコレステロールが気になるという方は、お気軽に当クリニックにご相談ください。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

 

 

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