• 2024年10月1日

9月12日に製造販売承認されたJN.1株対応のレプリコンワクチンについて

東京都中野区で開業している、中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長の大庭健史です。

 

2024年10月1日より、高齢者などを対象としたオミクロン株JN.1系統対応の新型コロナワクチンの定期接種が開始されました。

 

これに先立ち、2024年9月12日には、厚生労働省の専門家部会がオミクロン株JN.1系統に対応した新型コロナウイルスの次世代mRNAワクチン「レプリコンワクチン(コスタイベ)」の製造販売を承認しました。

 

このワクチンは、通常、医薬品の導入が遅れがちな日本において、世界に先駆けて大規模接種が実施される予定となっています。

 

今回は、このレプリコンワクチンのコスタイベについて詳しく解説させていただきます。

 

 

レプリコンワクチンとは

レプリコンとは、自己増殖は可能ですが、ウイルス粒子を形成できなくなったウイルスゲノム(ウイルスの遺伝子を含むDNAもしくはRNA)のことです。

 

この技術を基に開発されたのが、レプリコンワクチンのコスタイベです。

 

これは2013年に設立されたアメリカのアークトゥルス・セラピューティクス社が開発し、日本ではMeiji Seika ファルマ社が製造・販売を担当しています。

 

 

レプリコンワクチンのメリットについて

このワクチンは、接種してから一定の期間、体内でコロナウイルスに対する抗体産生を促すmRNAが増殖し続けるという特徴があります。

 

そのため、接種量は従来のmRNAワクチンの6分の1から20分の1で済み、またその効果が長期間維持することが特長です。

 

また、日本で行われたコスタイベの第Ⅲ相臨床試験では、コスタイベの追加接種がファイザー社製新型コロナワクチンの追加接種と比較して、起源株に対して劣っていないことを示し、オミクロン株BA.4/5株に対してはより効果的であるということが報告されました。(https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(23)00650-3/fulltext)

 

そのため、新型コロナウイルス感染症の感染予防や重症化リスクの軽減、さらにはワクチン接種回数の削減が期待されています。

 

さらに、このレプリコンワクチンは新型コロナウイルス感染症に限らず、インフルエンザなどの感染症やがん予防ワクチンとしても応用が可能とされています。

 

今後、レプリコンワクチンは医療を大きく変える可能性があると言えるでしょう。

 

レプリコンワクチンの懸念点について

レプリコンワクチンは新薬であるため、当然ながら長期的な安全性は不明です。

 

また、ベトナムで実施された第Ⅲ相臨床試験では、コスタイベとの因果関係は否定されているとのことですが、いくつかの死亡例が報告されています。

 

さらに、2024年10月1日現在、このワクチンは開発国のアメリカや大規模な臨床試験を実施したベトナムでも製造承認が得られていない点も懸念されます。

 

加えて、既存のmRNAワクチンでも指摘されている「シェディング」という現象が発生する可能性も一部で懸念されています。

 

シェディングとは、mRNAワクチンやレプリコンワクチンの接種により体内で産生されたmRNAやスパイクタンパクが、接種者の呼気や汗などを通じて他者に影響を与えるという仮説です。

 

ただし、レプリコンワクチンによるシェディングが生じる科学的な根拠は一切なく、またこのワクチンは感染性を持たないように設計されていることが、2021年に世界的に権威のある科学誌『Science』でも報告されています。(https://www.science.org/doi/10.1126/science.abj8430)

 

まとめ

以上を踏まえると、レプリコンワクチンに関する懸念点は、既存のmRNAワクチンと大きく変わらない印象を受けます。

 

しかし、体内に長く留まるという特性は、既存のmRNAワクチンと比較してメリットと考えますが、デメリットと捉える方もいらっしゃるかと思います。

 

当クリニックの見解としては、レプリコンワクチンの将来性には大きな魅力を感じていますが、現時点では既存のmRNAワクチンの方が信頼性が高いと判断しています。

 

その理由は、既存のmRNAワクチンは日本国内で約3年半にわたり使用され、新型コロナウイルス感染症の感染および重症化を予防した実績があるためです。

 

そのため、当クリニックでは少なくとも今年度は、オミクロン株JN.1系統対応のレプリコンワクチン「コスタイベ」の導入を見送り、昨年に引き続きファイザーの「コミナティ」と第一三共の「ダイチロナ」をご用意しております。

 

接種費用は15,000円ですが、65歳以上、または60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器・免疫機能に1級相当の身体障害がある方は2,500円で接種できます。

 

当クリニックでは、新型コロナウイルス感染症の重症化リスク因子(糖尿病、脂質異常症、高血圧症、慢性腎臓病、肥満、慢性閉塞性肺疾患、悪性腫瘍、喫煙、免疫抑制剤の使用)をお持ちの方や高齢者の方には、新型コロナワクチン接種をお勧めしています。

 

なお、第一三共の「ダイチロナ」は土曜午前のみの完全予約制ですが、ファイザーの「コミナティ」は診療日であれば予約なしで接種可能ですので、ぜひご利用ください。(予約していただくと、よりスムーズに接種いただけます。)

 

なお、第一三共のコロナワクチン(ダイチロナ)の詳しい説明については、こちら(https://nakano-dm.clinic/blog/post-147)をご覧ください。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

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