- 2026年4月26日
- 2026年1月28日
続発性肥満症の原因になるうる7つの内分泌疾患を内分泌代謝科専門医が解説!
肥満は「食べ過ぎ」や「運動不足」といった生活習慣の問題として理解されることが一般的です。しかし、実際の診療現場では、それだけでは説明できない肥満にしばしば遭遇します。
その代表が「続発性肥満症」です。続発性肥満症とは、特定の病気やホルモン異常、あるいは薬剤の影響など、明確な医学的原因が背景となって生じる肥満を指します。
頻度としては原発性肥満と比べると決して多くはありませんが、重要なのは「まれだから重要でない」ということではありません。
むしろ、原因となる疾患が存在しているにもかかわらず、それが見逃されてしまうことで、肥満のみならず全身の健康状態が長期的に悪化していく危険性があります。

続発性肥満症を見逃すことの問題点
続発性肥満症が問題となる最大の理由は、体重増加そのものではなく、その背景にある疾患が適切に治療されない点にあります。
内分泌疾患が原因である場合、肥満に加えて高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が悪化しやすくなります。
また、骨粗鬆症や筋力低下、月経異常、不妊、抑うつや意欲低下など、生活の質を大きく損なう症状を伴うことも少なくありません。
食事内容に気を配り、運動を継続しているにもかかわらず体重が減らない、あるいは短期間で体重が増加している場合には、生活習慣だけで説明しようとせず、医学的な原因を考慮することが重要です。
内分泌性肥満とは
続発性肥満症の中でも、特に重要なのが内分泌疾患による肥満です。内分泌とはホルモンを分泌する仕組みのことで、ホルモンはエネルギー代謝、脂肪の蓄積や分布、筋肉量、食欲調節などに深く関与しています。
そのため、ホルモンの分泌に異常が生じると、生活習慣が大きく変わらなくても体重や体型に明らかな変化が現れることがあります。
ここからは、続発性肥満症の原因となりうる代表的な7つの内分泌疾患について解説します。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節する中心的な役割を担っており、甲状腺機能低下症ではこのホルモンの分泌が不足することで基礎代謝が低下します。
その結果、エネルギー消費量が減少し、体重が増えやすくなります。甲状腺機能低下症の原因として最も多い橋本病は中年以降の女性に多く、体重増加が加齢や体質の問題として見過ごされやすい点が特徴です。
症状としては、体重増加に加えて、むくみ、寒がり、倦怠感、眠気、便秘などを伴うことが多く、これらが複数同時にみられる場合には注意が必要です。
高齢者では、無気力や疲れやすさが目立ち、物忘れが増えて認知症のように感じられることもあります。
実際に、肥満患者19,996名を対象とした68件の研究を統合した報告では、顕性甲状腺機能低下症が約14.0%、潜在性甲状腺機能低下症が14.6%に認められており、肥満と甲状腺機能低下症の関連は決してまれではありません。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31652416)
クッシング症候群
クッシング症候群は、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)が慢性的に過剰分泌されることで生じる疾患です。
このホルモンは生命維持に不可欠ですが、過剰になると脂肪分布に特徴的な変化をきたし、顔が丸くなる満月様顔貌や、体幹部に脂肪が集中し手足は比較的細いといった中心性肥満を呈します。
これらに加えて、体幹に近い上腕や大腿部の筋力・筋量低下、皮膚の菲薄化や皮下出血、腹部の赤色皮膚線条、抑うつなどの症状がみられます。

また、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、骨粗鬆症といった生活習慣病のリスクが高まるほか、免疫力の低下により感染症を起こしやすくなるなど、単なる肥満とは明らかに異なる病気の状態を示します。
実際に、Van Hulsteijn らの報告では、肥満症患者の約0.9%にクッシング症候群を強く疑う高コルチゾール血症が認められたとされており、肥満の背景に隠れている病気として見逃さないことが重要です。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31652416)
成人成長ホルモン分泌不全症
成長ホルモンは小児期の成長に関与するだけでなく、成人においても脂肪分解や筋肉量の維持に重要な役割を果たしています。成人で成長ホルモンの分泌が低下すると、内臓脂肪が増えやすくなり、筋肉量が減少します。

その結果、体重増加が目立たなくても体脂肪率が高くなることがあり、いわゆる隠れ肥満の状態に陥ることがあります。
疲れやすさや意欲低下、集中力の低下などを伴うことも多く、生活の質に大きな影響を及ぼします。 なお、成人成長ホルモン分泌不全症に関する詳しい説明については、当クリニックのブログ「大人にも成長ホルモンが必要?成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)を解説!」をご覧ください。
インスリノーマ
インスリノーマは、膵臓にできる腫瘍で、インスリンが過剰に分泌されることにより低血糖を繰り返す病気です。
インスリンの過剰分泌により、低血糖症状を避けようとして無意識のうちに間食が増え、その結果、体重が増加することがあります。なお、インスリノーマの多くは良性腫瘍で、悪性はまれとされています。
症状としては、空腹時に冷汗、動悸、ふるえ、強い空腹感、意識障害などがみられ、食事を摂ると改善するという経過を繰り返すのが特徴です。
このような症状がある場合には、単なる肥満として扱わず、内分泌疾患の可能性を考慮することが重要です。
男子性腺機能低下症
男性ホルモンであるテストステロンは、筋肉量の維持や脂肪の蓄積を抑える働きに関与しています。このホルモンが低下すると筋肉量が減少し、相対的に内臓脂肪が増えやすくなります。
さらに、活力の低下や抑うつ気分、性欲低下などの症状を伴うことも多く、これらが加齢による変化として見過ごされやすい点が問題となります。
女性性腺機能低下症
女性ホルモンであるエストロゲンは、脂肪の分布や代謝に大きな影響を与えています。
エストロゲンが低下すると、皮下脂肪よりも内臓脂肪が増えやすくなり、特に閉経前後では体型の変化を自覚する方が多くなります。
これらの変化は自然な加齢現象と捉えられがちですが、内分泌学的な評価を行うことで、より適切な対応が可能となります。
多嚢胞性卵巣症候群
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、若年から中年の女性に多くみられる比較的頻度の高い疾患で、月経不順や排卵障害、不妊の原因として知られています。妊娠可能な年齢の女性の約5~10%に認められ、決してまれな病気ではありません。
肥満やインスリン抵抗性と深く関連しており、体重が増えやすく痩せにくいという特徴があります。また、男性ホルモンが高くなることで、ニキビや多毛などの症状を伴うこともあります。
これらの症状は単なる体質の問題と捉えられがちですが、早期に診断し適切な治療を行うことが重要です。
当クリニックでは血液検査を行い、LH(黄体形成ホルモン)高値や男性ホルモン(テストステロン)の上昇が認められる場合には、本疾患を疑い、婦人科へご紹介しています。
続発性肥満症の診断と治療の考え方
続発性肥満症では、体重減少そのものを目的とした食事療法や運動療法だけでは十分な改善が得られないことがあります。
最も重要なのは、肥満の背景にある内分泌疾患を正確に診断し、その原因に対する治療を行うことです。
原因疾患が適切に治療されることで、体重の改善だけでなく、全身の健康状態や生活の質の向上が期待できます。
まとめ
肥満を単なる自己管理の問題と考えてしまうと、内分泌疾患が背景にある「続発性肥満症」を見逃してしまうことがあります。
食事や運動に取り組んでいるにもかかわらず体重が減らない場合や、短期間で急激な体重増加がみられる場合には、ホルモン異常など内科的な原因が隠れている可能性があります。
中野またはその周辺のエリアで内科・内分泌内科をお探しの方は、自己判断で悩まず、ぜひ当クリニックへご相談ください。受診をご希望の方は、予約ページよりご予約いただけます。
当クリニックでは血液検査などを用いて肥満の原因を丁寧に評価し、一人ひとりに合った治療方針をご提案しています。早期の受診が、体重管理だけでなく将来の生活習慣病予防にもつながります。
(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)
