- 2026年3月12日
- 2025年12月23日
医師が解説! 健康診断結果の見方:まず確認したいLDLコレステロール
中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長、大庭健史です。
当クリニックでは、生活習慣病や内分泌疾患を中心に内科全般の診療を行うとともに、健康診断や予防接種など、予防医学にも力を入れています。
今回は、健康診断の結果の見方について解説したいと思います。健診結果が返ってくると、多くの方はまず総合判定に目を向けるのではないでしょうか。
しかし、総合判定を見ても「結局どういう意味なのかよく分からない」と感じる方は少なくありません。
また、個々の検査値を見ても、どこに注目すべきか分からないという声もよく耳にします。 健診で測定される検査値は、いずれも重要な意味を持つものですが、今回はあえて「特に優先して確認してほしい検査項目」に焦点を当て、順番に解説していきます。

まず最初に確認していただきたい数値があります。それが、LDLコレステロールです。
最初に見るべきLDLコレステロール
LDLコレステロールは、喫煙と並んで動脈硬化の進行に深く関与する、最も重要な指標の一つです。
特にLDLコレステロールは、動脈硬化性プラーク形成の中心的役割を担っており、動脈硬化が自覚症状のないまま進行していく過程を反映します。動脈硬化は痛みや不調をほとんど伴わず、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞として表面化します。

なぜ健診結果の中でLDLコレステロールを最重要視するのかというと、患者さんの間では脂質異常症が意外と軽視されがちで、LDLコレステロールが高い状態を放置している方が少なくないという現実があるからです。自覚症状がないために後回しにされやすい点も、この項目の特徴と言えます。
LDLコレステロールの重要性は、数多くの論文によって裏付けられています。Framingham Studyをはじめとする疫学研究では、LDLコレステロールが高いほど心血管疾患が増えることが一貫して示されてきました。
さらに決定的なのは介入試験の結果です。スタチンを用いた大規模臨床試験を統合したメタ解析では、LDLコレステロールを約38.7 mg/dL低下させるごとに、心筋梗塞や脳卒中などの主要心血管イベントが約21%減少することが示されています。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3437972)
重要なのは、「LDLコレステロールが高いと危険である」という関連だけでなく、「LDLコレステロールを下げることで予後が改善する」ことまで証明されている点です。
このレベルのエビデンスを持つ健診項目は多くありません。その意味で、LDLコレステロールは健診結果の中で最も重要な数字の一つと言えるでしょう。
中性脂肪とHDLコレステロールも合わせて見る
LDLコレステロールが重要であることは間違いありませんが、それだけで動脈硬化のリスクを判断するのは十分とは言えません。
中性脂肪とHDLコレステロールをあわせて確認することで、体の代謝状態や動脈硬化リスクをより立体的に把握することができます。
中性脂肪が高い状態は、内臓脂肪の蓄積やインスリン抵抗性と深く関係しており、生活習慣の影響を強く反映します。
一方、HDLコレステロールは血管内に蓄積した余分なコレステロールを回収する役割を担っており、その値が低いと動脈硬化は進行しやすくなります。

そのため、LDLコレステロールがそれほど高くなくても、中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低い場合には、将来の心血管イベントのリスクは決して低いとは言えません。
健診結果を評価する際には、これら3つの脂質指標を総合的に見ることが重要です。
軽視されがちな血圧の意味
血圧は健康診断で必ず測定される項目ですが、「少し高いだけ」と軽く受け止められてしまうことも少なくありません。
しかし血圧は、LDLコレステロールと同様に、わずかな上昇であっても長期間続くことで血管に持続的なダメージを与えます。
当クリニックのブログ「75歳以上でも血圧は125/75未満に!最新ガイドラインが示す新しい常識」でも触れましたが、近年の高血圧治療ガイドラインでは、年齢を問わず診察室血圧が130/80mmHg以上の場合は注意が必要とされ、従来よりも早い段階から血圧を評価・管理する重要性が強調されています。
特に上の血圧だけでなく、下の血圧も含めて年々上昇している場合は、血管のしなやかさが失われつつあるサインと考えられます。
次に注目したい空腹時血糖
空腹時血糖は、糖代謝の異常を早期に捉えるための重要な指標です。
糖尿病と診断されていなくても、空腹時血糖が高めで推移している状態は、すでに体が血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対して抵抗性を示し、十分に効きにくくなり始めている可能性を示唆します。
日本人はインスリン分泌能が低い傾向があり、軽度の血糖異常から糖尿病へ進行しやすいため、この数値には特に注意が必要です。
一般に空腹時血糖が110 mg/dL以上の場合は糖尿病予備軍と考えられ、126 mg/dL以上では糖尿病を強く疑う必要があります。
このような結果が健診でみられた場合には、放置せず早めに医療機関を受診し、詳しい検査や生活習慣の見直しを行うことが大切です。
クレアチニンとeGFRで見る腎臓の健康
腎臓の状態を評価する際、クレアチニンの値だけを見るのは十分とは言えません。
現在は、年齢や性別を考慮した eGFR という指標が広く用いられています。eGFRは腎臓がどの程度血液をろ過できているかを示す数値で、一般に 60以上が保たれていることが望ましい とされています。
eGFRが60未満になると、慢性腎臓病と診断される可能性があり、心血管疾患のリスクも高まります。腎機能の低下は自覚症状がほとんどないため、健診でeGFRを定期的に確認することが極めて重要です。
また、前年と比べてeGFRが低下していないか という経時的な変化にも注意が必要です。 さらに、尿蛋白や尿潜血が陽性の場合は、腎障害が進行している可能性があり、eGFRの数値が保たれていても注意が必要です。
このような所見がみられた場合には、放置せず早めに医療機関を受診し、詳しい検査を受けることが勧められます。
AST・ALT・γGTが示す生活習慣の影響
AST、ALT、γGTは肝臓の状態を反映する重要な数値です。これらが軽度に上昇している場合、脂肪肝や飲酒習慣、運動不足などの生活習慣が背景にあることが少なくありません。
脂肪肝は糖尿病や動脈硬化とも密接に関係しており、単なる肝臓の問題として放置すべきではありません。
健診でこれらの数値が基準値を超え、再検査や要受診と記載されている場合には、自己判断で様子を見るのではなく、一度医療機関を受診し、原因の評価や生活習慣の見直しについて相談することが大切です。
最後に見る尿酸の意味
尿酸値が高い状態は、痛風だけでなく、腎機能の悪化や動脈硬化とも関連することが分かっています。
一般に尿酸値が7.0 mg/dLを超えると痛風が起こりやすくなります。尿酸は、アルコール摂取や肥満の影響を受けやすい指標であり、生活習慣の乱れを反映する体からの分かりやすい警告サインとも言えるでしょう。

健診で尿酸値が8.0 mg/dL以上であった場合には、症状がなくても一度医療機関を受診し、原因の評価や生活習慣の見直しについて相談することをおすすめします。
おわりに
健康診断の結果で本当に大切なのは、異常かどうかを単純に判断することではなく、今後どのような健康リスクが考えられるかを把握することです。
LDLコレステロールを起点に、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、空腹時血糖、eGFR、肝機能、尿酸までを一連の流れとして捉えることで、生活習慣病の兆候はより明確になります。
健康診断の結果を受け取ったら、ぜひ数値を丁寧に見直し、前年からの変化にも目を向けてみてください。
その小さな気づきが、将来の大きな病気を防ぐ第一歩になります。結果の見方に迷ったり、気になる点や不安なことがあれば、どうぞお気軽に当クリニックへご相談ください。受診をご希望の方は、予約ページよりご予約いただけます。
(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)
