• 2026年5月20日
  • 2026年2月5日

糖尿病をHbA1cだけで判断してはいけない理由― 糖尿病専門医が解説 ―

目次

  1. はじめに
  2. HbA1cとはどのような指標か
  3. HbA1cは主に空腹時血糖を反映しやすい
  4. HbA1cでは評価できない食後高血糖と将来リスク
  5. HbA1cが正確に血糖状態を反映しない場合もある
  6. HbA1cを補うために必要な視点
  7. 食後高血糖対策で重要な食事療法
  8. 当クリニックの糖尿病診療について
  9. まとめ

 

はじめに

糖尿病専門医として東京都中野区中野で診療を行っております、中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科院長の大庭健史です。

 

健康診断や外来の場面で、「HbA1cが〇%ですね」と説明を受けることは、糖尿病診療では日常的です。

 

 

HbA1cは現在の糖尿病診療において欠かすことのできない重要な指標であり、治療目標の中心として広く用いられています。

 

一方で、HbA1cという一つの数値だけを基準に糖尿病の状態を判断してしまうと、血糖変動や低血糖、隠れた高血糖などを見逃してしまう可能性があるのも事実です。

 

本ブログでは、中野エリアで糖尿病診療を行う糖尿病専門医の立場から、HbA1cの有用性を正しく評価したうえで、その限界について分かりやすく解説します。

 

HbA1cとはどのような指標か

HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合を示す検査指標です。赤血球の寿命は約120日であるため、採血直前の食事の影響をほとんど受けず、過去1~2か月間の平均的な血糖状態を反映します。

 

2型糖尿病患者さんを対象に、血糖コントロールによって合併症の発症を抑制できるかを検討した大規模臨床研究であるUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)をはじめとする数多くの研究により、HbA1cを良好に管理することで糖尿病による合併症の発症や進行が抑えられることが明らかになっています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9742976)

 

このような背景から、HbA1cは現在においても糖尿病診療の根幹をなす、非常に有用な指標と位置づけられています。

 

 

HbA1cは主に空腹時血糖を反映しやすい

HbA1cは「平均血糖値を反映する指標」として説明されることが多い検査ですが、実際には空腹時血糖の影響を比較的強く受ける傾向があります。

 

糖尿病患者さんの中には、治療薬の影響などにより空腹時血糖やHbA1cはそれほど高くない一方で、食後高血糖が残存しているケースが少なくありません。

 

その結果、「HbA1cがそれほど高くないから問題ない」と判断されてしまい、食後高血糖が見過ごされることがあります。

 

HbA1cでは評価できない食後高血糖と将来リスク

食後高血糖は、単なる検査数値の問題ではありません。その代表例が、食後に血糖値が急激に上昇し、その後低下する「血糖値スパイク(グルコーススパイク)」です。

 

 

これまでの研究により、食後血糖の急激な上昇や血糖変動の大きさは動脈硬化の進展を促し、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントと強く関連することが示されています。

 

空腹時血糖よりも、食後血糖や血糖変動のほうが将来のリスク評価に重要であるとする報告もあり、HbA1cのみを指標とした評価では、合併症リスクを過小評価してしまう可能性があります。

 

HbA1cが正確に血糖状態を反映しない場合もある

HbA1cの問題点は、食後高血糖を反映しにくい点だけではありません。

 

貧血、腎機能障害、肝疾患、出血や輸血の直後などでは、赤血球の寿命や代謝が変化するため、実際の血糖状態とHbA1cの値が一致しないことがあります。

 

このような状況では、HbA1cが実際より高く、あるいは低く測定されることがあり、数値の解釈には注意が必要です。

 

HbA1cを補うために必要な視点

HbA1cの弱点を補うためには、空腹時血糖や食後血糖をあわせて評価することが重要です。

 

必要に応じて、自己血糖測定(SMBG)やフリースタイルリブレ2などの持続血糖測定(CGM)を組み合わせることで、1日の血糖変動や血糖パターンを把握することが可能になります。

 

(出典:アボットジャパン社 ホームページ) 

 

これらの情報を総合的に評価することで、糖尿病の状態をより正確に把握でき、治療の最適化や将来の合併症リスクの抑制に役立てることができます。 

 

食後高血糖対策で重要な食事療法

食後高血糖の改善には、薬物療法だけでなく食事内容の見直しが欠かせません。

 

炭水化物の量や質、食べる順番、間食の取り方、外食時のメニュー選択などは、生活スタイルや背景によって最適な対応が異なります。

 

そのため、画一的な指導ではなく、一人ひとりの生活に合わせた個別性の高い栄養指導が重要となります。

 

当クリニックの糖尿病診療について

当クリニックでは、HbA1cの数値だけに頼らず、血糖の動きや患者さん一人ひとりの生活背景を重視した糖尿病診療を行っています。食後高血糖や血糖変動を丁寧に評価し、必要に応じて治療方針や生活指導を調整しています。

 

また、隔週月曜の午後には管理栄養士による栄養相談を実施しています。HbA1cはそれほど高くないものの血糖が安定しない方や、自己流の食事療法を続ける中で限界を感じている方にとって、専門家による栄養相談は大きな支えとなります。

 

なお、日程の都合で栄養相談を受けられない場合には、当クリニック院長のブログ「糖尿病の食事療法と当クリニックの栄養指導について」も、ぜひ参考にしていただければと思います。

 

まとめ 

HbA1cは、糖尿病診療において非常に有用であり、現在でも欠かすことのできない重要な指標です。

 

一方で、HbA1cだけでは食後高血糖や血糖変動といった重要な問題を十分に評価できないという側面もあります。

 

真に良好な血糖コントロールを目指すためには、数値そのものだけでなく、その背景にある血糖の動きや日々の生活習慣に目を向けることが重要です。

 

中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科では、HbA1cの値だけにとらわれず、血糖変動や生活背景を重視した診療と、管理栄養士による栄養指導を組み合わせたサポートを行っています。

 

HbA1cはそれほど高くないのに血糖が安定しない方や、今の治療に不安を感じている方はぜひ一度ご相談ください。受診をご希望の方は、予約ページよりご予約いただけます。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

中野駅前内科クリニック糖尿病・内分泌内科 03-3382-1071 ホームページ