• 2026年10月24日
  • 2026年9月30日

中性脂肪(トリグリセライド:TG)を下げる!フィブラートについて専門医が解説

目次

 

はじめに

健康診断で「中性脂肪(トリグリセライド)が高いですね」と指摘されたことはありませんか。

 

LDLコレステロールは気にしていても、「中性脂肪はそれほど重要ではない」と考えている方は少なくありません。しかし、中性脂肪が高い状態を放置すると、高LDLコレステロール血症ほどではないものの動脈硬化が進みやすくなることが知られています。

 

さらに、著しく高値になると、急性膵炎という重篤な病気を引き起こす危険性があります。また、中性脂肪の増加は脂肪肝や糖尿病とも深く関係しているため、適切な管理・治療が重要です。

 

中性脂肪を下げる薬には、EPA製剤やフィブラート系薬剤などがあります。なかでも、中性脂肪を大きく低下させる代表的な薬が「フィブラート系薬剤」です。

 

現在、日本で主に使用されているフィブラート系薬剤は、ベザトール(ベザフィブラート)、リピディル・トライコア(フェノフィブラート)、そして比較的新しいパルモディア(ペマフィブラート)です。

 

これらは同じフィブラート系薬ですが、それぞれ特徴が大きく異なります。今回は、糖尿病・脂質異常症などを専門とする内分泌代謝科専門医の立場から、それぞれの特徴や使い分けについてわかりやすく解説します。

 

 

フィブラート系薬とは?

フィブラート系薬は、「PPARα(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α)」という核内受容体を活性化することで作用します。

 

PPARαが活性化されると、肝臓で脂肪の燃焼が促進され、中性脂肪を多く含むVLDL(超低比重リポ蛋白)の産生が減少します。

 

さらに、血液中の中性脂肪を分解する酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)の働きが高まるため、中性脂肪が効率よく分解され、血液中の中性脂肪値が低下します。

 

 

その結果、

・中性脂肪は20~50%程度低下する

・HDLコレステロールは5~20%程度上昇する

・小型で酸化されやすいLDLが減少し、より大きなLDLへ変化する

という脂質改善効果が期待できます。

 

ここからは、代表的なフィブラート系薬剤について、ベザトール、リピディル・トライコア、パルモディアの順に、それぞれの特徴や注意点を解説します。

 

ベザトールの特徴

ベザトールは、日本で長年使用されているフィブラート系薬です。発売から長い歴史があり、安全性や有効性について豊富なデータが蓄積されています。

 

中性脂肪を約21~69%低下させ、HDLコレステロールを上昇させる作用があります。一方で、近年特に注目されているのが血糖改善作用です。

 

ベザトールは血糖値も改善する可能性がある

フィブラート系薬は脂質異常症の薬ですが、ベザトールには脂質を改善するだけでなく、血糖値を改善する作用があることが以前から知られています。

 

これは、ベザトールがPPARαを活性化することで、脂肪をエネルギーとして利用しやすくなり、筋肉や肝臓でのインスリンの働きが改善すると考えられているためです。

 

実際に、脂質異常症と2型糖尿病を合併した日本人患者さんを対象に行われたJ-BENEFIT試験では、ベザトールを投与した患者さんで、中性脂肪が大きく低下しただけでなく、HbA1cや空腹時血糖も有意に改善しました。また、HbA1cが高い患者さんほど改善効果が大きい傾向も認められました。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3342914)

 

さらに、海外で行われたBezafibrate Infarction Prevention(BIP)試験では、糖尿病ではない患者さんにおいて、ベザトールを服用したグループは新たに糖尿病を発症するリスクが低下したことも報告されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15123532)

 

このように、ベザトールは中性脂肪を改善するだけでなく、血糖値の改善や糖尿病の予防にも役立つ可能性がある薬として注目されています。特に、脂質異常症と糖尿病を併せ持つ方にとっては、一つの薬で両方に良い効果が期待できる可能性があります。

 

ベザトールの注意点

一方で、ベザトールを使用する際には注意が必要な点もあります。ベザトールは主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している患者さんでは血中濃度が上昇しやすくなります。そのため、eGFRが低い場合には、腎機能に応じた減量や慎重な投与が必要です。

 

また、スタチンと併用すると、筋肉痛や筋力低下などの筋障害が起こるリスクが高くなることがあります。

 

特に、強い筋肉痛や脱力感などの症状が現れた場合には、早めに医療機関を受診することが重要です。

 

近年では、後述する比較的新しいフィブラート系薬剤であるパルモディアが登場したこともあり、ベザトールの使用頻度は以前より減っています。一方で、糖尿病を合併した高中性脂肪血症などでは、現在でも選択肢の一つとなる薬剤です。

 

次に、ベザトールとは異なる特徴を持つリピディル・トライコアについて解説します。

 

リピディル・トライコアの特徴

フェノフィブラートは世界中で広く使用されているフィブラート系薬で、日本では「リピディル」「トライコア」として知られています。

 

中性脂肪を30~50%程度低下させ、HDLコレステロールを上昇させる効果はベザトールと同程度ですが、この薬には他のフィブラートにはあまりみられない特徴があります。

 

それが尿酸値を低下させる作用と、糖尿病網膜症の進行を抑制する可能性です。

 

リピディル・トライコアの尿酸値を下げる作用

高尿酸血症は痛風の原因となるだけでなく、高血圧症、慢性腎臓病、糖尿病などとも関連することが知られています。

 

リピディル・トライコアは、腎臓からの尿酸排泄を促進する作用があり、血清尿酸値を10~20%程度低下させることが期待できます。

 

この尿酸値を下げる作用は、フィブラート系薬剤の中でもリピディル・トライコアの特徴の一つです。

 

そのため、中性脂肪が高く、尿酸値も高い患者さんでは、一つの薬剤で両方の改善が期待できる場合があります。

 

特に、脂質異常症と高尿酸血症を合併している方では、治療薬を選択する際の一つのメリットとなります。

 

リピディル・トライコアの糖尿病網膜症の進行抑制

リピディル・トライコアには、中性脂肪を下げる作用だけでなく、糖尿病網膜症の進行を抑える可能性があることも知られています。

 

2007年に発表されたFIELD試験では、約9,800人の2型糖尿病患者さんを対象に、リピディル・トライコアの効果が調べられました。

 

その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントを減らす効果は認められませんでした。一方で、糖尿病網膜症の治療で行われるレーザー治療が必要となる患者さんは約31%少なく、糖尿病網膜症の進行を抑える効果が認められました。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17988728)

 

その後に行われたACCORD Eye試験でも、スタチン系薬剤にリピディル・トライコアを追加した場合、スタチン単独と比べて糖尿病網膜症が進行するリスクが約40%低下しました。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25172198)

 

こうした研究結果から、リピディル・トライコアには、中性脂肪を下げる作用だけでは説明できない、糖尿病網膜症の進行を抑える働きがある可能性が考えられています。その背景には、炎症や酸化ストレスを抑える作用などが関係していると考えられています。

 

さらに近年、英国で行われたLENS試験でも、リピディル・トライコアによって糖尿病網膜症などの進行が抑えられる可能性が報告されました。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42117585)

 

これらの研究から、リピディル・トライコアは脂質異常症の治療だけでなく、糖尿病網膜症との関連でも注目されている薬剤です。

 

リピディル・トライコアの注意点

リピディル・トライコアも、腎機能が低下している患者さんでは慎重に使用する必要があります。この薬剤は主に腎臓から排泄されるため、腎機能に応じて減量するなどの対応が必要です。

 

また、スタチン系薬剤と併用する場合には、筋肉痛や筋力低下などの筋障害が起こることがあります。そのため、定期的な血液検査を行い、筋肉に気になる症状がないか確認することが大切です。

 

このように、リピディル・トライコアは中性脂肪を下げるだけでなく、尿酸値や糖尿病網膜症への効果も期待できる一方、腎機能や併用薬には注意が必要です。

 

次に、こうしたフィブラート系薬剤の中でも比較的新しい薬剤であるパルモディアについて解説します。

 

パルモディアの特徴

2018年に日本で発売されたパルモディアは、選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)という新しいカテゴリーの薬です。

 

従来のフィブラートはPPARα以外にもある程度作用するため、副作用とのバランスが課題でした。一方、パルモディアはPPARαに対する選択性が非常に高く、より効率よく脂質代謝を改善できるよう設計されています。

 

パルモディアは中性脂肪低下作用が非常に強い

パルモディアは、中性脂肪を低下させる作用が非常に強いフィブラート系薬剤です。

 

国内外の臨床試験では、中性脂肪を40~50%以上低下させる効果が報告されており、ベザフィブラートなど、他のフィブラート系薬剤と比べても中性脂肪を強く低下させることが期待できます。

 

また、パルモディアは中性脂肪を下げるだけでなく、血管にたまりやすいレムナントコレステロールなどにも作用し、血液中の脂質バランスを改善する効果が期待できます。さらに、HDLコレステロールを増やす作用もあります。

 

このため、脂肪肝や肥満などに伴って中性脂肪が高くなっている場合にも、脂質改善の選択肢となる薬剤です。

 

パルモディアの肝機能への好影響

パルモディアには、中性脂肪を下げる作用に加えて、肝機能検査の数値を改善する作用も報告されています。日本人を対象とした研究では、ALTやγ-GTなどの数値が低下することが確認されています。

 

中性脂肪が高い方では、脂肪肝を合併していることも少なくありません。特に、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)を合併している患者さんでは、中性脂肪を改善しながら肝機能の改善も期待できる点は、パルモディアの特徴の一つといえます。

 

ただし、パルモディアが脂肪肝そのものを治療する薬というわけではなく、食事や運動などの生活習慣の改善も重要です。

 

 

PROMINENT試験

パルモディアについては、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントを減らす効果にも期待が寄せられていました。

 

2022年に発表されたPROMINENT試験では、糖尿病を合併した高中性脂肪血症の患者さん約1万人を対象に、パルモディアの効果が検討されました。

 

その結果、パルモディアによって中性脂肪は大きく低下しましたが、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントを有意に減らす効果は認められませんでした。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36342113)

 

この結果から、パルモディアは心筋梗塞や脳梗塞の予防を目的として使用する薬剤ではありません。

 

一方で、中性脂肪が500 mg/dL以上と非常に高く、急性膵炎のリスクが高い患者さんでは、中性脂肪を低下させる治療の選択肢となる薬剤です。

 

3剤はどう使い分けるのか

ベザトール、リピディル・トライコア、パルモディアはいずれもフィブラート系薬剤ですが、それぞれに異なる特徴があります。

 

ベザトールは、中性脂肪を下げる作用に加えて、血糖値にもよい影響を与える可能性があります。そのため、糖尿病や糖尿病予備軍(耐糖能異常)があり、中性脂肪も高い患者さんでは、現在でも選択肢となる薬剤です。ただし、腎機能が低下している場合には使用に注意が必要です。

 

リピディル・トライコアは、中性脂肪を下げる作用に加えて、尿酸値を低下させる作用があることが大きな特徴です。

 

また、糖尿病網膜症の進行を抑える可能性もあるため、高尿酸血症や糖尿病網膜症を合併している患者さんでは、他のフィブラート系薬剤よりもメリットを生かしやすい薬剤といえます。

 

一方、現在のフィブラート系薬剤の中で、特に中性脂肪をしっかり下げたい場合には、パルモディアが有力な選択肢となります。

 

実際に、パルモディアは中性脂肪を強力に低下させることが確認されており、他のフィブラート系薬剤と比較しても高い中性脂肪低下効果が期待できます。

 

また、腎機能への影響が比較的少ないことも特徴の一つで、腎機能が低下している患者さんでは、他のフィブラート系薬剤より選択しやすい場合があります。

 

特に、中性脂肪が500mg/dL以上と非常に高く、急性膵炎のリスクを考えて早急に中性脂肪を下げる必要がある場合には、パルモディアを優先して検討する価値があります。

 

ただし、薬剤の選択は中性脂肪の値だけで決めるのではなく、血糖値、尿酸値、腎機能、糖尿病網膜症の有無なども含めて判断することが大切です。

 

このように、現在では「中性脂肪を強力に下げたい場合はパルモディア」「尿酸値も下げたい場合はリピディル・トライコア」「血糖値への影響も考慮したい場合はベザトール」というように、それぞれの特徴を踏まえて使い分けることができます。

 

フィブラート治療で注意すべきこと

フィブラート系薬剤は中性脂肪を下げる効果が期待できる薬ですが、薬を服用するだけで十分というわけではありません。

 

アルコールの飲み過ぎ、糖質の摂り過ぎ、体重増加、運動不足などは、中性脂肪を上昇させる大きな要因となります。

 

そのため、薬物療法とあわせて食事内容を見直し、適度な運動を取り入れることが大切です。生活習慣を改善することで、中性脂肪をより効果的にコントロールすることが期待できます。

 

高中性脂肪血症の食事療法や運動療法について詳しく知りたい方は、当クリニックのブログ「高中性脂肪血症と低HDLコレステロール血症について解説」もご参照ください。

 

また、フィブラート系薬剤を安全に使用するためには、腎機能や肝機能などを定期的に確認することも重要です。医師と相談しながら必要な検査を受け、体調の変化にも注意しながら治療を続けていきましょう。

 

まとめ

フィブラート系薬剤は、中性脂肪が高い場合に使用される代表的な治療薬です。特に中性脂肪を強力に低下させたい場合はパルモディアが有力な選択肢ですが、ベザトールには血糖値へのよい影響、リピディル・トライコアには尿酸値を下げる作用や糖尿病網膜症の進行抑制に関する研究結果があるなど、それぞれに特徴があります。

 

そのため、中性脂肪の値だけでなく、糖尿病、高尿酸血症、腎機能、脂肪肝などの合併症や患者さんの状態を考慮して、適した薬剤を選ぶことが大切です。

 

健康診断で「中性脂肪が高い」と指摘された方や、脂質異常症の治療について相談したい方は、お気軽に当クリニックまでご相談ください。受診をご希望の方は、予約ページよりご予約いただけます。

 

中性脂肪だけでなく、LDLコレステロールやHDLコレステロール、脂肪肝、糖尿病、高尿酸血症なども含めて総合的に診療しています。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

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