- 2026年4月2日
2026年4月1日FDAで承認された経口GLP-1受容体作動薬ファウンダヨ
東京都中野区にある「中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科」院長の大庭健史です。私は糖尿病専門医・内分泌代謝科専門医として、生活習慣病やホルモンの病気を中心に診療しています。
当クリニックのホームページ「生活習慣病」のページでもご紹介している、今後注目される肥満症治療薬のひとつである経口GLP-1受容体作動薬「オルフォルグリプロン(orforglipron)」が、2026年4月1日にFDA(アメリカ食品医薬品局)により承認されました。
この薬は、創薬の初期段階において日本の中外製薬が関与した化合物で、その後イーライリリー社に導出され、同社が開発を引き継いでグローバルでの臨床試験と承認取得が進められてきました。日本の製薬企業が関わった研究が、世界的な新薬として実用化された点でも注目されています。
1日1回の内服で使用できる新しいタイプのGLP-1受容体作動薬で、食事のタイミングに関係なく服用できる点が大きな特徴です。

2026年第2四半期(2026年4月〜6月)には、アメリカで販売が開始される予定とされています。 本剤は商品名「ファウンダヨ」として展開される予定で、ノボ・ノルディスク社のリベルサスに続く、2番目の経口肥満治療薬となります。
さらに、日本でも早ければ2026年度中に発売される見込みとされており、これまでの肥満治療の選択肢を大きく広げる可能性があります。
GLP-1受容体作動薬の進化と「飲み薬」の意義
GLP-1受容体作動薬は、食欲を抑えたり、胃の動きをゆっくりにしたり、血糖値の上昇を抑えたりすることで、体重減少をサポートするお薬です。こうした作用から、近年では肥満治療の中心的な存在となっています。
ただし、これまでしっかりとした効果が期待できる薬の多くは注射タイプであり、「注射に抵抗がある」「続けにくい」といったハードルがあるのも事実でした。
その中で登場した飲み薬のリベルサスは大きな進歩でしたが、「空腹時に飲む」「少量の水で服用する」「服用後30分は飲食を控える」といった細かなルールがあり、実際には続けにくいと感じる方も少なくありませんでした。
これに対してファウンダヨは、こうした制限が少なく、食事のタイミングを気にせず服用できるように設計されています。
そのため日常生活の中に無理なく取り入れやすく、リベルサスと比べても、より続けやすい飲み薬といえます。
ファウンダヨの大規模な臨床試験について
ファウンダヨの効果は、多くの患者さんを対象にした大規模な臨床試験(第3相試験)でしっかりと確認されています。
まず、肥満症の方を対象とした「ATTAIN-1試験」では、約1年半(72週間)治療を続けた結果、最大の用量で平均12.4%の体重減少がみられました。(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2511774?utm_source=openevidence)

(引用:N Engl J Med. 2025 Nov 6; 393(18): 1796-1806)
3000人以上が参加した大きな試験で、糖尿病がない方でもはっきりとした減量効果が確認されています。
また、「ATTAIN-2試験」では、肥満または過体重に加えて2型糖尿病をお持ちの方を対象とし、同じく72週間で最大10.5%の体重減少が認められました。
さらに、体重が10%以上減った方の割合は最大で約半数にのぼり、しっかりとした減量効果が多くの方に得られている点が特徴です。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41275875)
加えて、糖尿病の方を対象とした「ACHIEVE-1試験」では、約40週間という比較的早い段階で平均7.9%の体重減少がみられており、比較的早く効果が現れることも示されています。(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2505669?utm_source=openevidence)
さらに注目すべきなのが、飲み薬同士を比較した「ACHIEVE-3試験」です。この試験では、ファウンダヨが既存の経口GLP-1薬であるリベルサスと比べて、体重減少効果と血糖改善効果の両方でより優れた結果を示しました。
体重減少については、ファウンダヨが約8.2%、リベルサスが約5.3%と、より大きな減量が確認されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41765029)

(Lancet. 2026 Mar 21; 407: 1147-1160)
このように複数の試験を通して、ファウンダヨは安定して高い体重減少効果を示しており、「飲み薬でありながらしっかり体重を減らせる」新しい治療薬として期待されています。
リベルサスとの違いについて
ファウンダヨの大きな特徴は、「飲みやすさ」と「しっかりした体重減少効果」の両方を兼ね備えている点です。
まず飲み方についてですが、リベルサスは空腹時に少量の水で服用し、その後しばらく飲食を控える必要があるなど、いくつかの決まりがあります。そのため、人によっては続けにくいと感じることもあります。
一方でファウンダヨは、食事のタイミングに関係なく服用できるように設計されており、飲む時間にあまり制限がありません。日常生活の中で無理なく取り入れやすく、継続しやすいお薬といえます。
さらに効果の面でも、比較試験においてリベルサスよりも大きな体重減少が確認されています。飲み薬でありながら、注射タイプの薬に近いレベルの減量効果が期待されている点も大きな特徴です。
このようにファウンダヨは、「飲みにくい上に効果はやや控えめ」とされてきた従来の飲み薬のイメージを変える、新しいタイプの治療薬といえるでしょう。
日本での位置づけと今後の見通し
日本では肥満治療薬について、安全かつ適切に使うためのルールが設けられています。特に肥満治療薬としてのGLP-1受容体作動薬は、厚生労働省が「最適使用推進ガイドライン」を定めており、一定の条件を満たした医療機関での使用が想定されています。
そのため、ファウンダヨが肥満症の治療薬として承認された場合でも、はじめのうちは使える医療機関や対象となる患者さんが限られ、すぐに広く使われるわけではない可能性があります。
一方で、ファウンダヨは今後、糖尿病の治療薬として承認される可能性もあると考えられています。もともとGLP-1受容体作動薬は糖尿病治療で広く使われている薬であり、この適応で承認されれば、より多くの方が治療の選択肢として利用できるようになることが期待されます。
このように日本では、まず肥満症の治療薬として限定的に導入され、その後、糖尿病治療薬としての位置づけが広がることで、徐々に普及していく可能性が高いと考えられます。
安全性と副作用について
ファウンダヨの安全性については、これまで使われているGLP-1受容体作動薬と大きく変わらないと考えられています。
主な副作用としては、吐き気や下痢、胃の不快感など、胃などの消化管に関する症状がみられることがあります。
これらは飲み始めの時期に起こりやすいですが、多くの場合は軽度から中程度で、使い続けるうちに徐々に落ち着いてくることが分かっています。
全体としては、これまでの同じタイプのお薬と同様の安全性が確認されており、現時点で特別に大きな新しいリスクは報告されていません。
まとめ
ファウンダヨは、リベルサスに続く経口GLP-1受容体作動薬でありながら、飲みやすさと体重減少効果の両方で進化した新しいお薬です。
第3相試験では最大で10〜12%以上の体重減少が示され、さらにリベルサスとの直接比較でも優れた効果が確認されています。
2026年第2四半期(2026年4月〜6月)にはアメリカで販売開始予定であり、日本でも早ければ2026年度内に発売される見込みです。
今後は適応の広がりとともに、肥満症や糖尿病の治療において重要な役割を担うことが期待されます。
一方で、薬はあくまで治療の一部であり、肥満症の基本となるのは食事や運動といった生活習慣の見直しです。
薬の力を上手に活用しながら、無理のない形で生活習慣を整えていくことが、長期的な体重管理には重要です。
肥満症の治療は一人ひとり異なり、最適な方法もそれぞれ異なります。大切なのは、ご自身に合った方法を見つけ、無理なく継続していくことです。
当クリニックでは、医師による診療に加えて管理栄養士による栄養指導も行い、食事面からのサポートも重視しています。また、食事や運動の具体的なポイントについては、「肥満症の食事療法と運動療法について専門家が分かりやすく解説」のブログでもご紹介しています。
肥満にお悩みの方は、自己判断で抱え込まず、当クリニックへご相談いただくことも一つの方法です。受診をご希望の場合は、予約ページよりご予約いただけます。患者さん一人ひとりにとって最も適した治療をご提案いたします。
(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)
