• 2026年9月9日
  • 2026年5月19日

マンジャロやオゼンピックなどのGLP-1受容体作動薬の使い分けについて解説

目次

 

はじめに

中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の院長、大庭健史です。

 

私は糖尿病専門医として、これまで多くの糖尿病・肥満症の患者さんを診療してきました。近年、糖尿病治療の中でも特に大きく進歩しているのがGLP-1受容体作動薬です。

 

以前は「血糖値を下げる薬」というイメージが中心でしたが、現在では体重減少効果に加え、心臓や腎臓を守る作用も期待され、治療の考え方そのものを変えつつあります。

 

特に最近は、マンジャロの登場によって、糖尿病治療と肥満治療は大きく進化しました。一方で、「一番強い薬を使えばよい」というわけではありません。

 

年齢、体格、食欲、合併症、低栄養やフレイルのリスク、注射への抵抗感などによって、適した薬は異なります。

 

今回は糖尿病専門医の立場から、マンジャロ、オゼンピック、リベルサス、トルリシティ、ビクトーザ、ゾルトファイなどのGLP-1関連薬について、それぞれの特徴や使い分けを、論文データも交えながら一般の方にもわかりやすく解説します。

 

 

GLP-1受容体作動薬とはどのような薬か

GLP-1(Glucagon-Like Peptide-1)は、小腸から分泌される消化管ホルモンで、食事を摂ると分泌が増えます。

 

血糖値が高い時に膵臓からのインスリン分泌を促進し、逆に血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制することで、血糖値を下げる働きを持っています。

 

さらに、胃の内容物の排出をゆっくりにして食後血糖の急上昇を抑えるほか、脳の食欲中枢にも作用して食欲を低下させます。

 

GLP-1受容体作動薬は、このGLP-1の作用を応用した薬ですが、体内で分解されにくいように改良されているため、効果が長く持続するのが特徴です。

 

「血糖改善」と「食欲抑制」を同時に期待できる点が大きな特徴で、従来の糖尿病薬とは異なる強みがあります。

 

従来のインスリンやスルホニル尿素薬では、血糖値は改善しても低血糖や体重増加が問題となることが少なくありませんでした。

 

一方、GLP-1受容体作動薬は低血糖リスクが比較的少なく、体重減少も期待できるため、現在の糖尿病治療や肥満症治療において非常に重要な役割を担っています。

 

現在主流となっているGLP-1関連薬

現在、日本で主に使用されているGLP-1関連薬には以下があります。

・マンジャロ(ゼップバウンド)

・オゼンピック(ウゴービ)

・リベルサス

・トルリシティ

・ビクトーザ

 

それぞれの薬には、血糖値や体重への効果、使いやすさ、副作用の出やすさなどに違いがあります。そのため、どの薬が合うかは患者さんによって異なります。

 

次に、それぞれのGLP-1関連薬がどのような方に向いているのかを、わかりやすく解説していきます。

 

高度肥満や強いインスリン抵抗性にはマンジャロが有力

BMI 30kg/m²以上の中等度以上の肥満や、インスリンが効きにくい「インスリン抵抗性」が強い2型糖尿病の方に、現在もっとも効果が期待できる薬の一つがマンジャロです。

 

マンジャロは、従来のGLP-1受容体だけでなく、GIP受容体にも作用する新しいタイプの薬で、「GIP/GLP-1受容体作動薬」と呼ばれます。従来のGLP-1受容体作動薬よりも、血糖値を下げる効果や体重を減らす効果が強いことが特徴です。

 

実際にSURPASS-2試験では、マンジャロはオゼンピックよりもHbA1c改善効果、体重減少効果ともに優れていることが示されました。

 

 

特に15 mg投与群では、約40週間で平均約12.4 kgの体重減少が認められ、大きな注目を集めました。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34170647)

 

 

さらに、肥満症患者を対象としたSURMOUNT-1試験では、糖尿病のない肥満症の方でも平均20.9%という非常に大きな体重減少効果が報告されています。これは従来の内科的肥満治療としては画期的な結果でした。(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2206038)

 

 

実際の診療でも、食欲が強い方や間食が多い方、内臓脂肪が多い方では、「食べたい気持ちそのものが減った」と感じるケースがあります。また、体重減少に伴って脂肪肝の改善が期待できる場合もあります。

 

一方で、効果が強い分、吐き気、胃もたれ、便秘、下痢などの胃腸症状は比較的起こりやすい傾向があります。

 

また、急速に体重が減ることで筋肉量まで落ちてしまうこともあるため、特に高齢の方では慎重な使用が必要です。

 

「体重を減らすこと」が必ずしも良いとは限らないため、患者さんごとの体力や栄養状態を考慮しながら治療を行うことが大切です。

 

軽度肥満や心血管リスクを重視するならオゼンピックという選択肢も

BMIがそれほど高くない方でも、糖尿病に加えて高血圧症や脂質異常症を合併しており、将来的な動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞のリスクが気になる場合には、マンジャロだけでなく、オゼンピックを選択することがあります。

 

オゼンピックは週1回注射するタイプのGLP-1受容体作動薬で、血糖値を改善しながら体重減少も期待できるお薬です。特に、心臓や血管の病気を予防する効果について、多くの研究データが蓄積されている点が大きな特徴です。

 

代表的なのが、SUSTAIN-6試験です。この研究では、2型糖尿病患者さんにおいて、心筋梗塞や脳梗塞、心血管死などの重大な心血管イベントが約26%減少したことが報告されました。(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1607141)

 

  

さらに、SELECT試験では、糖尿病のない肥満患者さんでも、心血管イベントを約20%減少させたことが報告され、大きな話題となりました。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37952131)

 

 

このように、オゼンピックは「血糖値を下げる薬」というだけでなく、「将来の動脈硬化リスクを減らす薬」としても期待されています

 

実際には、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方、慢性腎臓病をお持ちの方、高血圧症や脂質異常症を複数合併している方などで選択されることがあります。

 

体重減少効果はマンジャロより穏やかですが、その分、副作用が比較的軽く、続けやすいと感じる方も少なくありません。また、長年使われてきた実績があり、安心感のある薬剤の一つです。

 

注射が苦手な方には リベルサス という選択肢も

GLP-1関連薬に興味はあるものの、「注射だけはどうしても苦手」という方は少なくありません。そのような方にとって、大きな選択肢となるのが、飲み薬タイプのGLP-1受容体作動薬であるリベルサスです。

 

リベルサスは、世界初の飲み薬タイプのGLP-1受容体作動薬であり、PIONEER試験によって、その有効性が確認されています。

 

この試験では、リベルサス14mgを使用した患者さんで、HbA1cが約1.0〜1.4%改善し、DPP-4阻害薬のジャヌビアや、SGLT-2阻害薬のジャディアンスより高い血糖改善効果が示されました。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6484814)

(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31530666)

 

実際の診療でも、「まずは飲み薬から始めたい」「自己注射に抵抗がある」「できるだけ負担の少ない形で治療を始めたい」という方に選ばれることが多い薬です。

 

一方で、飲み方には少し特徴があります。起床後の空腹時に、少量の水で内服し、その後30分は飲食を避ける必要があります。

 

そのため、朝すぐに食事をしたい方や、生活リズムが不規則な方では、継続が難しい場合もあります。また、飲み方によっては薬の吸収に差が出ることもあり、「飲み薬だから簡単」とは言い切れない面もあります。

 

それでも、注射への抵抗感からGLP-1治療を諦めていた方にとって、リベルサスは非常に大きな意味を持つ治療選択肢の一つです。

 

高齢者では“痩せすぎ”に注意しトルリシティを選ぶこともある

GLP-1関連薬というと「体重を減らす薬」というイメージがありますが、高齢者では、体重を減らしすぎないことも非常に重要です。

 

特に75歳以上では、筋肉量の低下やフレイル(加齢による心身の衰え)が大きな問題となります。

 

血糖値の改善だけを優先すると、「HbA1cは良くなったが筋力が落ちた」「食事量が減りすぎた」「体重が減りすぎてふらつく」といった状況につながることがあります。サルコペニアや転倒リスクを高めてしまうため注意が必要です。

 

そのような場合に選択肢となるのが、比較的体重減少作用が穏やかなトルリシティです。週1回の注射製剤ですが、操作が比較的簡単で、高齢の方でも扱いやすいという特徴があります。BMIがそれほど高くない方や、独居で複雑な注射操作が難しい方にも使いやすい薬剤です。

 

また、トルリシティは血糖改善だけでなく、心血管イベントを減らす効果も報告されています。REWIND試験では、約9,900人の2型糖尿病患者さんを平均5年以上追跡した結果、心筋梗塞・脳卒中・心血管死を合わせた「主要心血管イベント」を約12%減少させることが示されました。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31189511)

 

高齢者の糖尿病治療では、「血糖値を下げること」だけではなく、「筋力や生活機能を維持すること」も非常に重要です。

 

トルリシティは、過度な体重減少を避けながら血糖改善を目指したい方に適した選択肢の一つといえます。

 

持効型インスリン使用中ならゾルトファイへの切り替えが有効なこともある

すでに持効型インスリンであるトレシーバやランタス(グラルギン)を使用している患者さんでは、ゾルトファイへの切り替えが非常に有効な場合があります。

 

ゾルトファイは、トレシーバと、GLP-1受容体作動薬のビクトーザを組み合わせた配合注射です。

 

持効型インスリン単独治療では、空腹時血糖は改善していても食後高血糖が残り、HbA1cが下がりきらないケースが少なくありません。

 

その結果、超速効型インスリンを追加して強化インスリン療法へ進むことがありますが、低血糖や体重増加の問題が大きくなりやすいという欠点があります。

 

そこでGLP-1作用を加えることで、食後血糖改善や体重増加抑制を狙うのがゾルトファイです。

 

DUAL試験では、持効型インスリン単独よりも優れたHbA1c改善効果と、低血糖・体重増加の抑制が示されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26934259)

 

特にトレシーバ使用中の患者さんでは、切り替えが比較的スムーズであり、注射本数を増やさずに治療強化できる点が大きなメリットです。

 

「インスリン量がどんどん増えている」「体重が増えて困っている」「注射回数を増やしたくない」という患者さんでは、有力な選択肢になることがあります。

 

GLP-1関連薬は「最も痩せる薬」を選べばよいわけではない

近年はSNSなどの影響もあり、「一番痩せる薬はどれか」という観点だけでGLP-1関連薬が語られることも増えています。

 

しかし実際の医療では、それだけで薬剤を選択することはありません。

 

高度肥満で強い食欲抑制が必要な患者さんもいれば、逆に「これ以上痩せさせたくない高齢者の方」もいます。また、動脈硬化リスクを重視すべき患者さんもいれば、注射継続が難しい患者さんもいます。

 

つまり重要なのは、「どの薬が最強か」ではなく、「その患者さんに最適なのはどの薬か」という視点です。

 

GLP-1関連薬は非常に優れた治療選択肢ですが、適切な使い分けがあってこそ、本来の効果を最大限に発揮します。

 

まとめ

GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、現在の糖尿病・肥満症治療を大きく変えつつあります。

 

特にマンジャロは非常に強い体重減少効果が期待できるため、高度肥満症や強いインスリン抵抗性を伴う方では有力な選択肢となります。

 

一方で、「注射には抵抗がある」という方には内服薬のリベルサス、過度な体重減少を避けたい高齢者ではトルリシティ、すでにトレシーバなどの持効型インスリンを使用している方ではゾルトファイへの切り替えなど、それぞれの患者さんの状態や生活スタイルに応じた使い分けが重要になります。

 

また、これらの薬剤には血糖改善や体重減少だけでなく、心血管イベント抑制などのメリットも期待されています。

 

しかしその一方で、吐き気や食欲低下などの副作用、筋肉量低下への注意が必要な場合もあり、年齢・体格・合併症などを踏まえた「個別化医療」が非常に重要です。

 

さらに、糖尿病・肥満症の治療では薬物療法だけでなく、食事療法や運動療法などの生活習慣改善が基本となります。

 

生活習慣を整えることで血糖コントロールの改善につながり、将来の動脈硬化や心血管疾患などの合併症予防も期待できます。

 

詳しくは、当クリニックの以下のブログもぜひご参照ください。

糖尿病の食事療法と当クリニックの栄養指導について

糖尿病の運動療法について

 

当クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態やご希望に合わせ、GLP-1関連薬を含めた最適な治療をご提案しております。

 

肥満症や糖尿病治療についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。予約ページよりご予約いただけます。患者さん一人ひとりに合わせた、最適な治療をご提案いたします。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

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