- 2024年5月3日
糖尿病患者さんが水分摂取時に注意する点について管理栄養士がくわしく解説
中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科の管理栄養士、武居ひろ子です。
さわやかな風が吹き、一年で最も過ごしやすい季節になってきましたね。のどが渇きやすくなるこれからの時期は、こまめな水分補給が重要です。
日本の湿度の高い環境では、汗をかいても蒸発しにくくなり、汗の量も多くなります。
そのため、この時期には水分摂取量を増やす必要がありますが、特に糖尿病の方では気をつける点がいくつかあります。今回は、要点別に注意事項について解説させていただきます。
摂取すべき水分量について
まず水分の適量についてですが、室内で過ごすことが多い方は、1日に摂取するべき水分量は1.2~1.5 Lがおおまかな目安とされています。
これに加えて私たちは食事から800~1000 mLをとっています。また、代謝によって生成される水分が約300 mLあり、これらを合わせると1日に必要な水分量は約2.5 Lとなります。
ただし、内服している薬によっては糖を尿から排出して尿量が増える場合があります。その際は、より意識して水分を摂取することが重要です。
水分の摂り方について
次に、水分の摂取方法についてですが、こまめに少量ずつ飲むことが重要です。
一気に飲むと胃腸に負担がかかり、吸収が妨げられるため、少しずつ飲むようにしましょう。また、水を飲むタイミングも大切です。就寝中は体が汗をかくため、起床時にコップ1杯程度の水を飲むと良いでしょう。
さらに、3回の食事中や入浴前、就寝前に加えて、1時間半から2時間おきに水を飲むことをおすすめします。暑い時期に外出する際は、ペットボトルや水筒などで飲み物を持ち歩き、頻繁に水分補給を行いましょう。
水分の種類について
水分の種類については、甘くないものが基本になります。水やカフェインの含まない麦茶が最適であり、お茶や紅茶などもお勧めできます。
また、暑い時期には塩分補給を目的にスポーツドリンクを利用する方もいますが、これらの飲料には糖分が多量に(500 mLのペットボトルに30 g以上)含まれている場合があります。そのため、急激に血糖値を上昇させる可能性があるため、スポーツドリンクはお勧めできません。
夏季であっても、3食バランスのとれた食事を摂取し、涼しい室内で過ごすのであれば、特別塩分を足さなくでも大丈夫です。また、体に良いイメージのあるヨーグルトドリンクや乳酸菌飲料なども、過剰な糖分摂取に気をつける必要があります。
また、野菜不足を解消するために野菜ジュースを飲む方も多いですが、最近では様々な種類の商品がありますので、成分表示を確認することが重要です。エネルギーだけでなく糖質や食物繊維の項目に注目してください。
野菜ジュースの糖質は一般に5~20 g/200 mLの範囲にありますが、どの製品でも血糖値上昇の可能性があります。
また、野菜ジュースから摂取できる食物繊維の量は、商品間の差はもちろんのこと同じ商品でもバラつきがあり0.2 g~2.3 g/mLと多くはありません。そのため、野菜ジュースなどに頼りすぎず、野菜はなるべく食事の中で積極的に食べるのがとよいでしょう。
ゼロカロリー飲料について
最近は「カロリーゼロ」と謳った清涼飲料水(ゼロカロリー飲料)が多数販売されています。ゼロカロリー飲料であればいくら飲んでも大丈夫と考える方もいるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
まず、ゼロカロリー飲料は、100 mL当たりのエネルギーが5 kcal未満ではありますが、多量に摂取すれば血液中の血糖値や中性脂肪値などが上昇します。
さらに、ゼロカロリー飲料に含まれるアスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料は、腸内細菌や腸内でのグルコース吸収能などを悪化させるという報告もあります。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3319034)
また、人工甘味料の強い甘味に慣れると甘味に対する感覚が鈍くなり、より甘いものを多く摂取してしまう可能性もあります。そのため、ゼロカロリー飲料の過剰摂取は血糖コントロールの悪化や肥満などのリスクを高めると推定されています。
以上のことから、ゼロカロリー飲料は通常の清涼飲料水よりも多少良い程度に考えています。そのため、通常の清涼飲料水からゼロカロリー飲料に置き換えることは悪くありませんが、できればゼロカロリー飲料を含めた清涼飲料水を控えることをお勧めします。
最後に
私は当クリニックの管理栄養士として、主に第2・第4月曜日の午後(14時30分から18時まで)に患者さん向けの栄養相談を行っています。
食事のことでお悩みの糖尿病の方は、ぜひ一度当クリニックの栄養相談を受けにいらしてください。
また、月曜日にご来院できない方は、当クリニック院長のブログ「糖尿病の食事療法と当クリニックの栄養指導について」も参考にしていただければと思います。