• 2026年8月14日
  • 2026年4月1日

2024年6月改定で適応拡大された肥満手術を専門医が解説!

目次

 

肥満手術について

東京のJR中野駅南口すぐの「中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科」院長の大庭健史です。

 

当クリニックでは、糖尿病の有無にかかわらず、肥満でお悩みの方に対して、原因の評価から治療まで幅広く対応しています。

 

肥満症の治療は、これまで食事療法や運動療法が中心でしたが、近年は薬の進歩によって大きく変わってきました。

 

特にGLP-1受容体作動薬であるオゼンピック・ウゴービや、GIP/GLP-1受容体作動薬であるマンジャロ・ゼップパウンドの登場により、これまで難しかった大きな体重減少が、内科的な治療でも期待できるようになっています。

 

こうした流れの中で、2024年6月の診療報酬改定により、日本における肥満手術の位置づけにも重要な変化がありました。

 

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は適応が見直され、以前よりも対象となる方が広がりました。また、新たに腹腔鏡下スリーブバイパス術が保険適用となり、治療の選択肢がさらに増えています。

 

このブログでは、これらの手術の違いや対象となる方の条件、そして薬による治療との違いについて、できるだけわかりやすく解説していきます。治療選択で迷われている方の参考になれば幸いです。

 

 

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術とはどのような治療か

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は、胃の約70~80%を切除して、細長い筒状の形にする手術です。これにより、一度に食べられる量が少なくなり、自然と食事量を減らすことができます。

 

 

 

さらにこの手術の特徴は、「食べる量が減る」だけではない点にあります。食欲を高めるホルモンであるグレリンの分泌が減るため、空腹感そのものが起こりにくくなり、無理をせずに食事量をコントロールしやすくなります。

 

また、体の中のホルモンバランスが変わることで、血糖値の改善も期待でき、糖尿病の治療にも良い影響を与えることが知られています。

 

手術はお腹を大きく切らずに行う「腹腔鏡手術」で行われるため、体への負担が比較的少ない方法です。現在、日本では肥満症に対する代表的な手術として広く行われています。

 

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の適応条件

保険診療として腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を受けるためには、以下の①または②に該当し、さらに食事療法・運動療法・薬による治療を6か月以上行っても、十分な効果が得られていない場合が対象となります。

 

① BMIが35 kg/m²以上で、糖尿病・高血圧症・脂質異常症・閉塞性睡眠時無呼吸症候群・非アルコール性脂肪性肝疾患のいずれかの病気を合併している場合

② BMIが32.5~34.9 kg/m²で、HbA1c 8.0%以上の糖尿病を含め、上記のような肥満に関連する病気を2つ以上合併している場合

 

2024年6月の改定により、BMIが32.5 kg/m²以上の比較的軽度の肥満の方でも、糖尿病などの病気の状態が悪い場合には、手術が検討できるようになりました。これにより、これまでよりも対象となる方の幅が広がっています。

 

 

腹腔鏡下スリーブバイパス術とは

腹腔鏡下スリーブバイパス術は、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術に加えて、小腸(十二指腸から空腸の一部)を通らないようにする手術です。

 

これにより、食べられる量を減らすだけでなく、体に吸収されるカロリー自体も抑えることができるのが特徴です。

 

さらに、腸の働きやホルモンバランスが変化することで、インスリンの分泌や効き方が改善し、特に糖尿病に対して高い治療効果が期待されます。

 

この手術は、2024年6月から日本で新たに保険適用となり、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、より適した手術方法を選べるようになりました。

 

腹腔鏡下スリーブバイパス術の適応条件

腹腔鏡下スリーブバイパス術は、BMIが35 kg/m²以上の高度肥満であることに加えて、糖尿病を合併している方が対象となります。

 

さらに、食事療法・運動療法・薬による治療を6か月以上続けても、体重や血糖値の改善が十分に得られていない場合に検討されます。

 

この手術は、特に糖尿病の改善を強く目的とした治療である点が大きな特徴であり、糖尿病を合併していることが重要な条件となります。

 

手術の効果について

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術では、余分な体重の約65~75%程度の減少が期待されます。

 

体重が大きく減ることで、糖尿病や高血圧症などの改善も期待でき、糖尿病では約62.1%の方が薬を使わない状態(寛解)に至ると報告されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28971291)

 

一方、腹腔鏡下スリーブバイパス術では、さらに強い代謝改善効果が期待されます。特に、インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)が改善しやすく、長期的に血糖値を安定させる効果が高いとされています。

 

マンジャロ・ゼップパウンドなど内科治療との比較

近年、肥満治療で大きな注目を集めているのが、糖尿病治療薬のマンジャロと、肥満症治療薬のゼップパウンドです。

 

これらはいずれも同じ成分(チルゼパチド)を有しており、治療の目的に応じて使い分けられています。

 

これらの薬剤を用いたSURMOUNT-1試験では、最大用量である15 mgにおいて平均約20.9%の体重減少が認められ、さらに約40%の方が25%以上の体重減少を達成しました。従来の薬剤と比較しても、非常に高い減量効果が示されています。(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2206038?utm_source=openevidence)

 

さらに重要なのが、手術との比較です。一般的にGLP-1受容体作動薬は、肥満手術と比較すると体重減少量や糖尿病の改善効果の点で劣ることが知られています。

 

一方で、近年の臨床研究では、マンジャロやゼップパウンドは短期間の体重減少において、肥満手術に匹敵する可能性があることも報告されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41326176)

 

ただし、長期的な体重維持や糖尿病の改善・寛解については、現時点では十分なデータが蓄積されていません。

 

そのため、長期的な効果という観点では、依然として手術の方が優れている可能性があると考えられています。

 

このように、マンジャロやゼップパウンドは「手術の代替となる治療」というよりも、「手術を行わなくても改善が期待できる可能性のある治療」と位置づけるのが適切です。

 

それぞれの特徴を踏まえ、患者さんの状態に応じて最適な治療法を選択することが重要です。

 

注意すべき点と適応判断の重要性

これらの手術は高い効果が期待できる一方で、体に負担のかかる治療でもあります。

 

手術後は食事量が大きく減るため、ビタミンやミネラルが不足しやすくなり、栄養状態に注意が必要です。特にバイパス手術では栄養の吸収が低下するため、長期的なフォローが欠かせません。

 

また、精神面の評価もとても大切です。手術後は食事や生活習慣が大きく変わるため、その変化にうまく対応できない場合があります。

 

さらに、もともと摂食障害やうつ病がある場合には、治療の経過に影響することもあります。 このような理由から、手術を受けるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

 

医師だけでなく、看護師や栄養士、場合によっては心理の専門家など、複数の専門職が関わりながら、患者さん一人ひとりに合った治療を検討していくことが大切です。

 

当クリニックの治療方針

当クリニックでは、肥満症の治療において、まずは体への負担が少ない内科的な治療を優先しています。

 

マンジャロなどの薬物療法と、食事や運動といった生活習慣の見直しを組み合わせ、無理のない形で段階的に治療を進めていきます。

 

近年は薬の進歩により、これまで手術が必要と考えられていた方でも、内科的な治療で十分な改善が期待できるケースが増えてきました。そのため、まずは負担の少ない治療から始めることが大切だと考えています。

 

一方で、こうした治療でも十分な効果が得られない場合には、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術や腹腔鏡下スリーブバイパス術が重要な選択肢となります。

 

当クリニックでは、手術を無理に勧めることはありません。治療のメリットとデメリットをしっかりご説明したうえで、必要に応じて信頼できる専門の医療機関をご紹介いたします。

 

患者さん一人ひとりに合った治療を、一緒に考えていくことを大切にしています。

 

まずはご相談ください

肥満症の治療は一人ひとり異なり、最適な方法もそれぞれ異なります。大切なのは、無理なく継続できる治療を選ぶことです。

 

当クリニックでは、医師による診療に加えて、管理栄養士による栄養指導も行い、食事面からのサポートも重視しています。

 

内科的な治療を中心に、必要に応じて専門医療機関と連携しながら治療を進めていきます。食事や運動の具体的なポイントについては、「肥満症の食事療法と運動療法について専門家が分かりやすく解説」のブログでも詳しくご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。

 

体重や健康診断の結果でお悩みの方、治療選択に迷われている方は、まずはお気軽にご相談ください。

 

中野またはその周辺で肥満にお悩みの方は、自己判断で抱え込まず、ぜひ当クリニックへご相談ください。

 

受診をご希望の方は、予約ページよりご予約いただけます。患者さん一人ひとりにとって最も適した治療をご提案いたします。

 

(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)

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