- 2026年7月7日
- 2026年4月16日
ヨードを含むうがい薬を多用すると甲状腺に悪影響というのは本当?
目次
- はじめに
- ヨードを含むうがい薬と甲状腺の関係
- 日本人はヨード過剰になりやすい
- うがいでもヨードは体内に吸収される
- 実際に報告されている甲状腺への影響
- ヨード過剰で起こる体の変化
- 問題は「多用」と「習慣化」
- 予防目的なら水うがいで十分
- 当クリニックの方針
- 気になる症状があればご相談ください
はじめに
JR中野駅南口すぐの「中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科」院長の大庭健史です。
私の研究分野は糖尿病に関するものが多いですが、日本医科大学千葉北総病院では週1回の甲状腺専門外来を担当し、甲状腺エコー検査の技術指導にも携わってきました。
その経験を生かし、当クリニックでは橋本病やバセドウ病などの甲状腺疾患に対する専門的な診療を行っています。また、甲状腺がんが疑われる場合には、速やかに専門医療機関へご紹介しております。
このように日々甲状腺診療に携わる中で、患者さんからよくいただくご相談の一つがイソジンなどの「ヨードを含むうがい薬と甲状腺への影響」です。
「風邪予防のためにうがい薬で毎日うがいをしている」「消毒効果があるから安心」と考えている方は多く、実際に習慣的に続けている方も少なくありません。
一方で、「使いすぎると甲状腺に悪影響がある」といった情報もインターネット上で多く見られます。
結論からお伝えすると、「使いすぎると甲状腺に悪影響がある」という点は概ね正しく、当クリニックでは日常的なイソジンなどのヨードを含むうがい薬は推奨していません。その理由について、順を追ってご説明します。

ヨードを含むうがい薬と甲状腺の関係
イソジンなどのうがい薬に含まれるヨード(ヨウ素)は、細菌やウイルスに対する消毒作用を持つ一方で、甲状腺ホルモンの材料として体に欠かせない成分です。
甲状腺はヨードを取り込んでホルモンを作り、代謝や体温、エネルギーの調整に関わっています。そのためヨードは必要不可欠ですが、「多すぎても少なすぎても問題になる」という特徴があります。
日本人はヨード過剰になりやすい
日本人は昆布やひじきなどの海藻類を日常的に摂取しているため、ヨード不足になることはほとんどありません。

むしろ、知らないうちに過剰摂取になっているケースが問題になります。このような背景の中で、ヨードを含むうがい薬を日常的に使用すると、体内のヨード量がさらに増えてしまう可能性があります。
うがいでもヨードは体内に吸収される
「うがいだから体への影響は少ないのでは?」と思われがちですが、実はヨードは口の粘膜から吸収され、体の中に取り込まれます。ヨードを含むうがい薬を使うと、血液や尿の中のヨードの量が増えることが知られています。
特に、毎日のように繰り返し使っていると、その影響が少しずつ積み重なる可能性があります。実際に、6か月間毎日使用したケースでは、体内のヨード量がはっきりと増えていたという報告もあります。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3350910)
実際に報告されている甲状腺への影響
ヨードを含むうがい薬の長期使用が甲状腺機能に与える影響については、いくつかの臨床研究で検討されています。
ある研究では、長期間使用した患者さんの中に、軽度の甲状腺機能低下症や軽度の甲状腺機能亢進症が一定数認められました。
いずれも多くは無症状で、血液検査で初めて分かる程度の変化ですが、甲状腺機能に影響を及ぼす可能性が示唆されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9403259)
また、日常的なうがいとは状況が異なるものの、帝王切開時にヨードを使用したケースでは、術後24時間でFT3の低下とTSHの上昇が確認されたとの報告もあります。
これは、体内に取り込まれたヨードが一時的に甲状腺ホルモンの産生に影響を与えた可能性を示す所見です。
このように、イソジンなどのうがい薬に含まれるヨードは体内に吸収され、使用量や使用期間によっては甲状腺機能に変化をもたらす可能性があると考えられています。 (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12011531)
ヨード過剰で起こる体の変化
ヨードを過剰に摂取すると、体は甲状腺ホルモンを作りすぎないように調整し、その結果ホルモンの産生が抑えられることがあります。
これは「ウォルフ・チャイコフ効果」と呼ばれ、大量のヨードが体内に取り込まれることで、甲状腺へのヨードの取り込みが低下し、ホルモン合成が抑制される現象です。
この影響により、だるさやむくみ、寒がりといった症状を伴う甲状腺機能低下症が起こることがあります。
また、これとは逆にホルモンが過剰に産生されてしまうことがあり、動悸や発汗、体重減少、不整脈などを伴う甲状腺機能亢進症を引き起こす場合もあります。
問題は「多用」と「習慣化」
ここで重要なのは、ヨードを含むうがい薬を一時的に使用すること自体が問題なのではなく、「多用」や「習慣化」がリスクになるという点です。
体調不良時に短期間使う程度であれば、大きな影響が出ることは多くありません。しかし、毎日のように使い続けることで、知らないうちにヨードの過剰摂取となり、甲状腺に影響が及ぶ可能性があります。
予防目的なら水うがいで十分
さらに重要なのは「予防効果」という観点です。京都大学で行われた臨床研究では、水うがい・ヨードうがい・うがいなしを比較した結果、水うがいが最も感染予防に優れていると報告されています。

この点については、当クリニックのブログ「当院における感染症対策と予防接種について」でもご紹介しています。
これらの結果から、日常的な風邪予防としては水でのうがいで十分であり、ヨードうがいを積極的に行う必要性は高くないと考えられます。
また、ヨードうがいは口腔内の常在菌バランスを乱したり、粘膜への刺激となる可能性も指摘されています。
当クリニックの方針
こうした医学的な知見を踏まえ、当クリニックではヨードを含むうがい薬の使用は基本的にお勧めしておりません。
日常的な感染予防としては、水でのうがいや手洗い、十分な休養といった基本的な対策を大切にすることが、体にとって自然で無理のない方法だと考えています。
ヨードを含むうがい薬は「強い消毒作用がある=より良い」と思われがちですが、日常的に使い続けることによる明確なメリットは乏しく、むしろ体への影響という側面も考慮する必要があります。
気になる症状があればご相談ください
ヨードの影響には個人差があり、すべての方に問題が生じるわけではありません。ただし、甲状腺の病気をお持ちの方や、妊娠中・妊娠を希望されている方、高齢の方では注意が必要です。
また、「疲れやすい」「動悸がする」「体重が変化した」といった症状がある場合、甲状腺機能の異常が関係していることもあります。甲状腺の状態は血液検査で比較的簡単に確認することができます。
当クリニックでは、甲状腺機能の評価や日常生活に関するご相談を行っております。体調に不安がある方は、お一人で悩まずお気軽にご相談ください。
日々の何気ない習慣が体に影響していることもありますので、正しい知識をもとにご自身に合ったケアを選ぶことが大切です。
中野およびその周辺でお悩みの方は、自己判断で抱え込まず、ぜひ当クリニックへご相談ください。受診をご希望の方は予約ページよりご予約いただけます。患者さん一人ひとりにとって最も適した治療をご提案いたします。
(文責:中野駅前内科クリニック 糖尿病・内分泌内科 院長・医学博士 大庭健史)
